鹿児島県の2025年産一番茶の荒茶生産量が8440トンで、初めて全国1位に立った。農林水産省が調査を始めた1991年以来、首位を維持していた静岡県を上回った。
その年の新芽を摘み取ったものが一番茶だ。二番茶以降を含めた全体の荒茶(生葉を蒸し、もんで乾燥させた一次加工品)生産量で鹿児島は昨年、初の日本一となった。だが一番茶に限れば静岡に1550トン差を付けられた。
品質が高く高値で取引される一番茶でも1位となったことは、ブランド力向上や急拡大中の輸出への弾みになる。好機を生かし、官民一体となって「稼ぐ力」をさらに高めてほしい。
24年産一番茶の荒茶生産量は静岡1万トン、鹿児島8450トンの順だった。25年産は鹿児島が前年とほぼ横ばいだったのに対し、静岡が19%減らした。静岡が力を入れる一番茶で逆転したことで、鹿児島は25年産の荒茶全体でも再び首位になる可能性が高くなった。
鹿児島は摘採面積が7670ヘクタール(前年比2%減)と、静岡の1万500ヘクタール(9%減)より狭い。それでも10アール当たりの生葉収量は589キロで静岡の380キロを209キロ上回った。リーフ茶離れや資材価格高騰が続いても、機械化や大規模化を進め、生産量の維持拡大に努めた結果と言える。
市場ニーズを探り、柔軟に応えてきた成果でもある。欧米で需要が伸びる抹茶の原料となるてん茶の増産や有機栽培への転換に鹿児島では力を入れてきた。24年産のてん茶生産量は2150トンで、4年前の2.7倍と急増。有機栽培茶も全国最大の産地となった。
低迷していた価格も復調の兆しを見せている。県茶市場で取引された25年産一番茶の平均単価は1キロ2146円(前年比46%高)と、過去10年で最高値。うち、リーフ茶に使われる本茶は2564円(40%高)、有機栽培茶4749円(104%高)だった。
24年度の県産茶輸出は95%増の63億3800万円と好調だが、トランプ関税の影響も予想される。日本茶人気が高まる中、中国も抹茶の一大供給源として存在感を高める。中東やアジア圏など販路開拓の努力を続けてほしい。
総務省家計調査に気になる数字があった。22~24年の1世帯当たり平均の年間リーフ茶購入額と数量は、鹿児島市が4384円、759グラムだった。県庁所在地・政令指定都市の中でそれぞれ8、18位。トップ静岡市(8749円、1344グラム)の半分程度だ。
同じ茶葉と急須を使っても入れ方で味わいは変わる。手首のスナップを利かせテンポ良く入れるとうまさを引き出せる。抹茶は鎌倉時代に中国から伝わり、日本で独自の発展を遂げた。
生産日本一を生かすため、こうした歴史や文化をまず県民が学び、お茶をたしなむことから始めたい。