社説

[日韓首脳会談]対話を続け関係深化を

2025年8月27日 付

 韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が6月の就任後初めて来日し、石破茂首相と会談した。

 韓国大統領が2国間外交で、唯一の同盟国である米国に先立ち日本を訪れるのは初めて。「韓日関係の重視を示す意義深い訪問だ」と語り、両国の友好ムードを演出した。

 日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致した。石破氏が「安定的な関係発展は両国の利益であり、地域全体の利益にもなる」と強調したように、地域の安定には両国の相互理解が欠かせない。対話を重ね、成熟した関係を深化させてほしい。

 李氏は野党代表時代、戦後最悪と言われた日韓関係の改善を進める前政権を「屈辱外交」と批判するなど対日強硬的な言動を繰り返してきた。大統領就任後は理念より国益重視の「実用主義」を掲げる。

 1965年の日韓国交正常化から60年の節目でもある。首脳が相互往来する「シャトル外交」の第1弾となる今回の会談では、両国が重要な隣国だとの認識を共有し緊密な連携を確認。合意内容を明記した共同プレスリリースを17年ぶりに発表した。焦点の歴史問題では石破氏が歴代内閣の立場を引き継ぐと伝達。李氏は明確な発信を控え、波風は立たなかった。

 李氏の対日姿勢には、日米韓3カ国連携を重視する米国に良好な日韓関係を示したい事情もある。その後の米韓首脳会談では、3カ国連携で日韓の歴史問題が足かせになってきたとの認識を示すトランプ氏に対し「心配される問題は全て片付けた」と語っている。

 とはいえ、韓国では対日融和路線への不満が一部にくすぶり、支持層から批判が出始めた。日本国内では、先の参院選で外国人規制を訴える排外主義的な主張が支持を伸ばした。

 双方から「反日」「嫌韓」の声が高まるリスクは消えていない。両首脳は、相手国の世論にも気遣う必要があることを肝に銘じなければならない。

 日韓は、内向き姿勢を強める米国の高関税政策をはじめ、軍事挑発を繰り返す北朝鮮、中国への対応など、外交や安全保障面で共通の課題に直面する。首都圏一極集中と地方の疲弊、少子高齢化、社会の分断、防災など国内問題の共通点も多い。

 会談では北朝鮮の非核化に向け日韓、日米韓で緊密に連携することを確認し、拉致問題解決の重要性を共有。地方創生など共通課題を巡り政府間協議の枠組み創設も申し合わせた。知見を出し合い、協力する意義は大きい。

 若者が外国で働きながら長期滞在できる「ワーキングホリデー」制度の参加回数拡大でも合意した。日本ではKポップやドラマ、韓国はアニメなどをきっかけに、互いの国に好印象を持つ若者は多い。未来に向け友好関係を深める取り組みとして、歓迎したい。

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