教員による児童生徒の盗撮事案が相次いで発覚した。安心なはずの学校で、信頼を寄せる子どもたちの人権を踏みにじる卑劣な犯罪である。
女子児童の盗撮画像や動画を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有したとして、名古屋市や横浜市の小学校の教員が性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕、起訴された。チャットには教員とみられる約10人が参加。女児の着替えや児童の顔に別人の体を合成した性的な「ディープフェイク」など約70点が投稿されていた。互いに称賛し合う書き込みもあったという。
早急に事件の全容を解明し、再発防止策を検討すべきだ。子どもたちや保護者のショックを思うとやりきれない。対応を誤れば被害者は一生、心に深い傷を負う。心のケアにも万全を期してほしい。
教育関係者による性犯罪・性暴力が後を絶たない。文部科学省によると、2023年度に懲戒処分や訓告を受けた公立学校の教員は320人で過去最多だった。今回の盗撮事件以降も福岡、広島、埼玉の各県で児童生徒に対する事件で教員が逮捕された。逮捕者や処分者など表に出る数字は「氷山の一角」とする見方もある。
「教員による児童生徒性暴力防止法」は国公私立を問わず、採用時にわいせつ行為による処分歴を国のデータベース(DB)で確認するように義務づけている。名古屋市ではDBの活用を怠っていた。運用が始まった23年度の文科省の全国調査では、私立の幼稚園や小中高校を運営する学校法人のうち、回答した75%が活用していなかった。利用の未登録も多かったという。
法令違反は明らかだ。教育現場は危機感を欠き、再発防止の制度趣旨を軽んじていると言わざるをえない。
国は26年度から、子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか雇用主側が確認する「日本版DBS」を導入する。初犯を防げないなどの課題はあるが一歩前進だろう。運用しながら実効性を高める取り組みが欠かせない。
学校内の死角になりやすい場所を減らすために、まずは教室、トイレ、更衣室など定期的な点検や巡回を強化し、犯罪の芽を摘み取るべきだ。防犯カメラ設置を求める意見もある。こども家庭庁の有識者検討会は、面談室など教員と児童生徒が一対一になる場所には有効とした。もちろん個人のプライバシーや現場の萎縮に十分な配慮が必要である。
教員は児童生徒の模範となり、人生に影響を与える存在だ。なり手不足で質の担保が難しくなっている現実があるにせよ、一部の不祥事によって、真摯(しんし)に職務に取り組む教員の信用を損なうのは看過できない。教育界全体で子どもの安全を最優先にした踏み込んだ対策をとらねば信頼は保てない。