自転車の交通違反に反則金を科す交通反則切符(青切符)制度が来年4月始まるのを前に、警察庁は取り締まりの考え方を示す「ルールブック」を公表した。
走行中にスマートフォンを使用する「ながら運転」は即、青切符の対象となる。通話したり画面を触ったりして運転すると周囲への注意が散漫になり、命を危険にさらす重大事故につながりやすいからだ。歩道通行や夜間の無灯火、傘差し運転、イヤホン装着などは悪質な場合を除き、現場での「指導警告」とするという。
自転車は身近で手軽な乗り物だがマナー違反や無謀運転が後を絶たない。被害者にも加害者にもならないよう安全ルールの丁寧な周知が求められる。
青切符導入は、道路交通法改正で酒気帯び運転などが昨年11月に罰則化されたのに続く措置。比較的軽微な115種類ほどの違反に反則金の納付を通告する行政手続きだ。重点対象とする違反を中心に取り締まり、警察官の指導や警告に従わなかったりした際の交付を想定する。16歳以上が対象で、反則金を納付すれば起訴は免除される。
背景には違反の増加がある。「ながら運転」を例にとれば死亡・重傷事故は昨年28件。統計が残る2007年以降最多だった。制度導入は事故を減らすためにやむを得ない面もあるだろう。指導や取り締まりは、各警察署が指定した「重点地区・路線」などで事故が多い朝の通勤・通学時間帯や日没前後の薄暗い時間帯を中心に実施する。
イラストを入れたルールブックでは、青切符の対象としてながら運転(反則金1万2000円)、遮断踏切立ち入り(7000円)、ブレーキなし(5000円)など代表例を挙げた。明記されていない行為もあり、警察による取り締まりの透明性が問われる。恣意(しい)的にならずに公平な執行を徹底することが必要だ。
自転車は免許不要だが、法律上は軽車両である。飲酒運転や事故など実際に危険を生じさせた場合は、起訴を見据えた交通切符(赤切符)の対象になることを忘れてはならない。
道路環境は自転車利用者からすると良好とは言い切れない。約6000件が寄せられた青切符のパブリックコメント(意見公募)では、歩道通行に関する取り締まりに批判が集まった。「まずは自転車専用道を整備すべきだ」などの意見が相次いだという。標識を含めた環境整備も同時に進めてほしい。
ヘルメット着用は努力義務だ。6月の全国街頭調査によれば鹿児島県の自転車利用者の着用率は38.3%と、定着とは言い難い。県内の自転車事故での死亡は24年までの5年間で13人に上り、いずれもヘルメットを着けていなかった。自らの命を守るため利用者一人一人が着用の必要性を自覚したい。