社説

[総裁選 経済政策]手取り増と成長両立を

2025年9月26日 付

 自民党総裁選の大きな論点は、国民の関心が高い経済政策だ。各候補はおおむね物価上昇を上回る手取りの確保に重点を置いている。

 当面の物価高対策として、即効性のある政策を迅速に実行することが重要だ。加えて世界的なインフレ定着を踏まえた中期的な政策が欠かせない。

 持続的な賃上げや投資拡充、企業支援などをどう具体化し経済成長を実現するか。論戦をさらに深めてほしい。

 各候補の主張では減税や新設の交付金など実現に一定の時間がかかる政策が目を引く。減税を唱えるのは小林鷹之、高市早苗、小泉進次郎の3氏だ。

 小林氏は所得税の定率減税を掲げた。財源は明確でないが、2年程度と期限を区切り、高所得者優遇にならないよう上限を設ける点は評価できる。

 高市氏は「給付付き税額控除」に意欲を示す。所得に応じて給付や所得税を控除する制度で、低所得者に支援が届きやすいとされる。課題は個人の経済状況を細かく把握する必要がある点だ。小泉氏は物価高に応じた所得税の基礎控除引き上げを強調する。

 茂木敏充氏は地方自治体が自由に使える数兆円規模の交付金創設を提唱した。増税ゼロの政策推進も訴える。林芳正氏は、税と社会保険料の負担を考慮しながら主に低・中所得世帯を支援する「日本版ユニバーサル・クレジット」を打ち出す。

 家計支援は重要だが、最大の物価高対策は賃上げだろう。茂木氏は3年で平均年収を50万円引き上げるとし、小泉氏も2030年度までに100万円増やすと訴えた。林氏は実質賃金の年1%上昇を定着させると主張する。

 少数与党下での政策実現には野党との連携が不可欠だ。給付付き税額控除に関しては自民、公明、立憲民主の3党がきのう初会合を開いた。

 一方、野党が主張する消費税減税について各候補から前向きな意見は出ていない。法整備やシステム改修が必要で実現に時間がかかるなどの理由だ。ただ茂木、高市、小泉各氏は与野党協議の議題から排除しない考えを示しており、議論を重ねる必要があろう。

 ガソリン税の暫定税率廃止には全員が賛成する。参院選で自民が掲げた一律2万円の現金給付に積極的な候補はおらず、ガソリン減税が短期的な対策として最も実現に近い政策と言える。しかし年内の実施に合意している与野党間の協議は、税収減の穴埋めに関して平行線で膠着(こうちゃく)している。

 減税や給付といった予算膨張につながりかねない政策が実行されれば、財政悪化の懸念が増すのは当然の流れだ。高市氏は積極的な成長戦略のためには赤字国債増発を容認する一方、他の4氏は慎重姿勢で考え方に幅がある。経済成長と財政健全化を両立させる責任ある戦略を示してもらいたい。

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