社説

[ガザ「和平計画」]戦闘終結へ意思共有を

2025年10月7日 付

 パレスチナ自治区ガザの戦闘は7日で開始から2年がたつ。ガザ側死者が6万7000人を超え餓死者も出る惨状を、国際社会が放置することはもう許されない。

 ここへ来てトランプ米大統領が和平計画を提示、急速に戦闘終結への期待感が高まっている。イスラエルのネタニヤフ首相が「合意」し、イスラム組織ハマスも条件付きながら拘束する人質全員の解放に同意した。

 政治的保身のため戦闘を長引かせているとされるネタニヤフ氏と、組織の存亡がかかるハマスの溝は大きいとみられる。しかしこの機を逃さず、関係国は和平に向けた強固な意思を共有してほしい。

 計画はイスラエルとハマスが合意すれば即時停戦し、イスラエル軍が段階的に撤収することを盛り込んだ。戦後統治にハマスの関与を認めず、イスラエルはガザを占領、併合しない。

 トランプ氏は先月、国連総会に合わせてアラブ諸国の首脳らとの多国間交渉に取り組み、支持を取り付けていた。イスラエルとハマスは、エジプトで仲介国を通じた間接交渉に臨む。

 ノーベル平和賞を渇望するトランプ氏は、ロシアのウクライナ侵攻やイラン核問題のいずれも解決が見いだせず、いらだちを募らせていたという。実績を求めているのは間違いない。思惑はどうあれ、ハマス、イスラエルを動かしたのは前進だ。

 ハマスは2年に及ぶ戦闘で幹部多数を殺害された。トランプ氏の和平計画を拒み、このまま戦い続けても勝ち目はなかった。一定程度応じて時間を稼ごう、との狙いが透ける。カタールやトルコなどハマスと関係が深い国々が和平受け入れを迫り、外交的にも外堀を埋められていた。

 国際包囲網を前に孤立を深めていたのは、イスラエルも同様だ。イスラエルとパレスチナの「2国家共存」実現へ圧力をかけようと、国連総会を機にパレスチナを国家承認する国が相次いだ。ネタニヤフ首相にとって「唯一の後ろ盾」である米政権にあらがうのは難しい。

 ただ、ハマスにとって人質は「唯一の切り札」だ。解放の前提条件としてイスラエル軍の攻撃停止やガザ撤収などの「保証」を求めてきたが、今回の計画には含まれていない。双方の駆け引きの激化は必至で、今後の展望は見通せない。

 ハマスのイスラエル奇襲が戦闘の始まりだったが、背景にはイスラエルによるパレスチナ抑圧がある。抵抗の根源を踏まえずいずれかに偏った協議になれば、恒久停戦は遠のくだけだ。

 現在、イスラエルのハマス拘束下の人質は約50人。うち生存者は20人前後とされる。人質解放を実現するにも猶予はない。

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