日本ジオパーク委員会が、奄美大島の東に位置する喜界島を新たな日本ジオパークに認定した。長い時間軸の中での世界的な気候変動や、地域の地殻変動がつくりだした何段もの隆起サンゴ礁段丘が高い評価を受けた。
「ジオ(大地)」「パーク(公園)」は地球の営みが分かる貴重な地形や地質の保護とともに、それらと人の暮らしの関わりを実感し、楽しんでいる取り組みを審査・認定する仕組みだ。鹿児島県内では霧島、桜島・錦江湾、三島村・鬼界カルデラに続く4カ所目、全国では計48地域になった。
サンゴ礁を重要な柱とする国内のジオパークは初めて。積極的に魅力を発信し、サンゴ礁の壮大な物語を未来につないでいきたい。
喜界島ジオパークは周辺海域を含む総面積約149平方キロメートル(うち陸域約57平方キロメートル)に及ぶ。喜界町は2023年に行政や商工会などでつくる喜界島推進協議会を設立。今年4月に認定申請していた。
島の原型は約170万年前に地殻変動で隆起した海底の泥岩。浅い海になったところにサンゴがすみ着いてサンゴ礁を形成し、数万年単位の海水面の変動や数千年単位の地盤隆起を繰り返し、今に至る。
標高200メートルを超える百之台公園などは、約10万年前の台地だ。つまり1年で2ミリという隆起速度は「驚異的」で、今後も続く可能性がある。
サンゴ礁の隆起の結果とされる階段状の段丘は昨年、国際地質科学連合の「世界地質遺産100選」に選ばれた。今回のジオ認定により、地球の記憶をとどめた場所としての価値がより高まったと言えるだろう。
地球温暖化によるサンゴの白化現象が世界中の海で起きている。喜界島はサンゴ礁に関するデータの宝庫ともされ、温暖化研究に貢献できる場所としての期待も一層かかる。
島ではサンゴ材を石垣や墓石に利用する独自の文化が発展した。島に見られる人々の暮らしや、希少な動植物がつくりだす特色ある景観に加え、住民らの「地域づくりへの明確な意思」も日本ジオ委員会は評価した。
喜界町は15年に島に開所した喜界島サンゴ礁科学研究所と連携し、専門的知見の蓄積と情報発信に努めてきた。子どもたちが地球環境について考える「サンゴ塾」など、次世代育成の取り組みも進む。こういった活動の積み重ねが実を結んだことを喜びたい。島に誇りを持つきっかけにもなるはずだ。
ジオは4年ごとに再認定審査がある。継続には共通認識の醸成が欠かせない。他県では再認定審査で改善点などの指摘を受けた後、認定を返上した事例も出ている。喜界島を含む県内のジオ認定地域が息長く活動していけるよう理解の輪を広げてほしい。