現職警察官の情報漏えいや性犯罪が近年相次いだ鹿児島県警で、またしても耳を疑う不祥事が明るみに出た。
県内で2025年、正当な理由なく他人の尻をスマートフォンで撮影したとして、巡査部長が減給100分の10(1カ月)の懲戒処分を受けていた。県警に県不安防止条例違反(卑わいな行為)の疑いで書類送検され、鹿児島地検の処分は不起訴となった。
23年以降に現職警察官らが次々と逮捕された異常事態を受け、県警は24年8月に定めた再発防止策に取り組むさなかである。組織の危機意識の低さ、自浄能力の欠如を露呈した。
県警が巡査部長を懲戒処分したのは8月だった。明るみに出るまで2カ月余り、私的な行為に関する不祥事として公表しなかった。所属や性別、認否、発覚の経緯を明らかにしていない。
警察庁の「懲戒処分の発表指針」によると、私的な行為での不祥事は停職以上が公表対象という。本紙連載「検証 鹿児島県警」で、識者が今回の処分を例に「内部の理屈で公表の是非を決めるのは不適切。県民に不安を与える悪質な事案であれば、積極的な情報公開に努めるべきだ」と指摘した。
減給1カ月の処分自体も妥当か。県議会の総務警察委員会は3月、一連の不祥事を巡る県警の懲戒処分が他の公務員に比べて甘いとし、警察庁と協議して基準を見直すよう求めた。県警は警察庁に要望を伝えたとしつつ、現行基準を維持する姿勢を崩さない。
南日本新聞の取材に警察庁は10月17日、人事院の指針も参考に基準を定めているとして「甘いという指摘は当たらない」と書面で回答した。当事者意識の希薄さがうかがわれ、“身内びいき”との批判は免れまい。
県警の再発防止策は「職責自覚と職務倫理の養成」をはじめ四つの柱を掲げた。全職員が組織改革に参加する「改革推進委員会・研究会」を設け、再発防止や改善策の進捗(しんちょく)状況を点検する。
さまざまな施策と向き合ってきたはずなのに不祥事根絶にはいまだ至らない。性的暴行の巡査部長(免職)に酒気帯び運転の巡査長(停職3カ月)、不同意性交や情報漏えい容疑の警視(停職1カ月)と枚挙にいとまがない。
25年の懲戒処分者は今回の巡査部長で5人目となり、24年に並んだ。県民の期待を再び裏切り、信頼回復がさらに遠のいた。「まだ(懲戒処分の)予備軍がいるのでは」と懸念する声も内部から漏れる。
職員の多くは真摯(しんし)に職務に励んでいる。一部の不心得者のために組織全体に不信の念を抱かれるのは不本意に違いない。警察の仕事は県民の信頼があってこそ成り立つ。県警は今秋にも再発防止策を更新する方針を示した。いま一度原点に戻り襟を正さなければ、今度こそ県民にそっぽを向かれる。



