社説

[新政権初の論戦]丁寧な合意形成実現を

2025年11月7日 付

 自民党と日本維新の会の連立による高市政権の発足後、初の国会論戦が始まった。高市早苗首相の所信表明演説に対する代表質問が行われた。

 衆参とも少数与党の立場で臨んだ高市氏は、低姿勢の答弁が目立った。物価高対策の裏付けとなる2025年度補正予算案や衆院議員定数削減といった難題が山積し、野党とも協調せざるを得ない事情がある。

 自民党の内輪もめによる政治空白に国民の失望は大きい。この国会を政策を前進させる場としなければならない。野党との丁寧な審議を通じた合意形成を実現してもらいたい。

 自民は公明党から維新に連立相手を代えて政権を維持したものの、与党の衆院会派の議席数は自民196、維新34で計230。過半数の233には届かず、法案や補正予算案の成立には一部野党の賛同が欠かせない。

 首相就任後初の論戦で高市氏は、安全運転に徹した印象だ。焦点の衆院議員定数削減については「各党とも真摯(しんし)な議論を重ねたい」と野党に呼びかけた。経済対策に関しても「対話と合意を積み重ね、速やかに取りまとめる」と協調姿勢を見せた。

 衆院定員の1割削減案は、自維連立合意に盛り込まれ急浮上した。高市氏は維新の藤田文武共同代表への答弁で、今国会に関連法案を提出し成立を目指す構えを強調したが、与党だけでの拙速は許されない。

 「民意切り捨て」「多様性が失われる」と与野党問わず異論は続出している。「真摯な議論」が口先で終わらぬよう、注視が必要だ。

 派閥の裏金事件について、高市氏は所信演説で素通りし、関係議員を政府や党の要職に起用した。官房副長官人事を問題視する質問に対し、「有為な人材の活躍の場を奪う」などと繰り返した。裏金問題を決着ずみとしたい意向は明らかだ。

 野党が迫る企業・団体献金の規制強化にも「政治活動の自由に関わる」として消極的だった。しかし、共同通信の世論調査で高市内閣発足時の支持率は64%に上ったのに対し、自民の支持率は31%にとどまった。「政治とカネ」問題に根ざした自民政治への不信感は払拭されていないと自覚すべきだ。

 所信演説で明言していた、防衛費と関連経費を合わせて国内総生産(GDP)比2%に増やす目標年度の前倒しについて、25年度補正予算で1兆円上積みすれば達成できると答弁した。防衛装備移転の5類型撤廃も含め、公明党の連立離脱で「ブレーキ役不在」とされる中、野党がいかに監視機能を務めるかが問われる。

 ガソリン税や軽油引取税の暫定税率廃止については与野党6党の合意に沿って対応すると言明。財源確保が肝心で国民が納得する議論を求めたい。

日間ランキング >