奄美大島を現地調査するユネスコ諮問機関の調査員ら=2019年10月、大和村の湯湾岳
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関は近く、日本政府が推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産の登録可否を勧告する。「奄美・沖縄」は2018年5月に登録延期の勧告を受け、希少種の保護など対策を強化して臨んだ20年は新型コロナウイルスの影響で先送りとなった。関係者は吉報を待ち望んでいる。
勧告は「登録適当」「不登録」のほか、推薦国に追加情報の提出を求める「情報照会」、推薦書の再提出を求める「登録延期」の4段階で示される。
登録が正式に決まるのは7月16~31日にオンラインで開かれるユネスコ世界遺産委員会の場だが、勧告の結果がそのまま委員会で踏襲される傾向が強く、事実上の「合否判定」とみなされている。
勧告の期限は委員会開催の6週間前までで、5月中にも出る可能性がある。
■独自の進化
「奄美・沖縄」は、大陸から取り残され独自の進化を遂げた希少動植物が多く生息する「生物多様性」が特徴。推薦地は鹿児島、沖縄両県の4島で、面積は計4万2698ヘクタール。亜熱帯照葉樹林の森林が大半を占め、アマミノクロウサギやヤンバルクイナなど絶滅の恐れがある固有種が生息する。
ユネスコの諮問機関は18年の登録延期勧告で、推薦地に飛び地が多いことを問題視した。希少野生生物の密猟対策の強化や、アマミノクロウサギなどを襲う野生化した猫(ノネコ)などの外来種対策、来島者の増加を見据えた観光の適正利用も指摘した。
■官民一体で課題解決
登録延期を受け、政府は19年に推薦書を再提出した。環境省などは密猟対策として、奄美大島山中の監視カメラを増設し、パトロール期間を延長。ノネコ捕獲事業では23年度までに、わな設置を島内の全森林に広げる予定だ。アマミノクロウサギなど人気の夜間観察スポットになっている奄美市の三太郎峠では、公道で全国初となる観察規制に向けた実証実験を進めている。
県奄美世界自然遺産登録推進室の鶴田晃紀室長は「官民一体で課題解決に取り組んできた」と手応えを語る。奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長(70)は「やれるだけのことはやった。いい勧告を待ちたい」と期待する。