【鹿児島大空襲】海からの強い風。街はあっという間に猛火に包まれた カラー写真でよみがえる当時の記憶

2021/06/16 21:59
カラー化された写真を見て鹿児島大空襲の夜を思い出す吉峯幸一さん、睦子さん夫妻=10日、南さつま市加世田唐仁原
カラー化された写真を見て鹿児島大空襲の夜を思い出す吉峯幸一さん、睦子さん夫妻=10日、南さつま市加世田唐仁原
 焦土と化した鹿児島市街地の“カラー写真”は、空襲で焼け崩れた建物や散らばる残骸と対照的に、今と変わらずそびえ立つ桜島が印象的だ。1945(昭和20)年6月17日の鹿児島大空襲から76年。体験者は「ここで死ぬと思った。何にもなくなった」と当時を思い起こした。

 元の白黒写真は、東京大大学院教授の渡邉英徳さん(情報デザイン)が人工知能(AI)でカラー化した後、現在の桜島の写真や終戦直後の資料を参考に補正を重ねてきた。

 自然な仕上がりにするのに苦慮したという。「現代は火山活動が活発な印象が強い桜島が、焼け跡の中に収まる景色もあったと改めて気付かされた」と振り返る。

 写真に映っている易居町と近接する潮見町(現在の泉町付近)で空襲に遭った吉峯幸一さん(96)、睦子さん(95)夫妻=南さつま市加世田唐仁原=は、海岸沿いの防空壕(ごう)に逃げて助かった。海からの強い風で街はあっという間に猛火に包まれ、山形屋の窓のあちこちから赤い炎が吹き出していた。

 朝日通りにあった睦子さんの実家も焼失。焼け跡にピアノ線だけが絡まって残っていたのが印象深いという。翌朝、雨が降る中を磯方面まで歩いて移動した。空襲前、防火帯を設ける「建物疎開」で取り壊された家屋も多く、カラー化された写真を見て「もっと何にもなかった印象」と話す。

 渡邉さんは毎日、カラー化した国内外の戦場や空襲の写真を「76年前の今日」などとしてツイッターで紹介する活動を続ける。戦争や自然災害の記憶が、時間の経過とともに忘れ去られることを強く懸念。「今後はますますカラー化などの方法で過去の災いにまつわる対話を生み出し、記憶を未来に向けて受け継ぐ営みが必要になってくる」と指摘した。

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