墓前で手を合わせる墓参者。今年は墓守サービスの利用者も多い=13日、鹿児島市の唐湊墓地
お盆の墓参りで新型コロナウイルス対策をどうすればいいか-。南日本新聞の「こちら373(こちミナ)」に疑問の声が寄せられた。感染者が爆発的に増えている中、先祖をしのぶ光景は変化しているのか。鹿児島県内の事情を調べてみた。
盆の入りの13日、鹿児島市の唐湊墓地には多くの家族連れらが訪れた。あいにくの大雨にもかかわらず、墓石を丁寧に磨き、花を供えていた。
管理事務所によると、コロナ前に比べ墓参者は大幅に減り、県外ナンバーの車はほとんど見掛けなくなった。そんな中、神奈川県から帰省した主婦(56)は「コロナ下でも両親へのあいさつは欠かせない」と静かに手を合わせた。
■右肩上がり
鹿児島市草牟田1丁目の大迫花屋は、県外在住者や墓に来るのが難しい人に代わり管理を代行する「墓守サービス」をしている。
今年はコロナ感染者急増で首都圏などから帰省を控える人の依頼が増えた。「手入れ後の墓や花を撮った写真を送ると喜んでもらえる」と店主の大迫美代子さん(75)。サービスを頼んだ埼玉県蓮田市の無職小牧昌平さん(68)=鹿児島市出身=は「気軽に帰省できず大変重宝している」と満足する。
同市シルバー人材センターは2010年度から墓守サービスを開始。受注件数は初年度の44件から右肩上がりだ。コロナ流行前の19年度547件、流行後の20年度が609件に伸びた。今年は昨年を上回るペースといい、担当者は「先祖を敬う気持ちの表れ。心を込めて掃除している」。
■分散参り
鹿児島市小松原2丁目の小松原納骨堂は消毒液を用意し、長時間の滞在を控えるよう呼び掛ける。例年、この時期の参拝者は一日平均約800人だが、今年は同500~600人。職員は「今年も寂しいお盆になる」と話す。
姶良市東餅田の憲徳寺は換気を徹底し、貼り紙で対策を周知。本堂の収容人数を半分にした。参拝者が集中する日には代表者の名前を書きとどめている。
県内の感染者が急激に増えたここ数日、墓参を延期するとの申し出が数件あった。住職の藤谷真さん(43)は「皆さんが感染対策に気遣っているのか、自然と分散している。形にこだわらなくとも、『今いる場所で盆を迎えられた』と思いをはせることが大切だろう」と語った。