サポートに回り、練習を見守る抜水昂太主将=20日、いちき串木野市の神村学園人工芝サッカー場
サッカーの第100回全国高校選手権で、鹿児島県代表の神村学園は31日に初戦を迎える。1年間チームをけん引してきた抜水昂太主将(3年)は、故障のため出場はかなわない。サポート役に徹する主将から日本一の夢を託された仲間たちは、「昂太のために」と優勝を誓う。
同校の全国選手権出場は5年連続だ。抜水選手は1年生からメンバー入りしてきた。だが、試合に出る機会はなかった。今回こそ-。最終学年となり、大会に懸ける思いはひとしおだった。
悲劇が襲ったのは県予選開幕1週間前の10月下旬。試合中に右膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大けがを負った。全治8カ月。県予選はおろか、全国大会にも間に合わない。あまりに非情な現実に「感情がなくなった」。
しかし主将として、涙に暮れる暇はなかった。「切り替えられたわけではないけれど、割り切った」。プレーできなくても練習に顔を出し、声を掛け続けた。その姿を目にした仲間たちの間で、いつしか「昂太を日本一のキャプテンにする」が合言葉になった。
県予選決勝の試合終了間際、交代でピッチに送り出された。大量リードを奪った仲間たちのお膳立てで、諦めていた舞台を少しだけ体感できた。「いい仲間を持った。感謝しかない」
県予選後に手術し、全国大会でピッチに立つ可能性は消えた。それでも登録メンバーのリストには名前が記された。「ベンチにいるだけで全員が落ち着く。替えの効かない存在」(有村圭一郎監督)だからだ。
「昂太のために」という仲間の思いは、十分に受け取った。それだけに、全国の舞台では「試合を楽しんで、それぞれが自分のために戦ってほしい」と願う。その先に、約束の「日本一」が待っていることを信じて。