「島から甲子園へ」という誓いを実現させた大野稼頭央投手(左)と西田心太朗捕手=28日午後6時36分、奄美市名瀬安勝町
大島高校(鹿児島県奄美市)が28日、選抜高校野球の切符を自力でつかみ取った。県大会優勝、九州大会準優勝の原動力が、大野稼頭央投手(17)と西田心太朗捕手(17)の2年生バッテリーだ。ともに島内の出身。「島から甲子園」の思いを共有し、強い絆で結ばれた2人は、念願の“聖地”で活躍を誓う。
大野投手は140キロ台後半の直球と切れのある変化球が武器の左腕。西田捕手が頭脳的な配球でその力を引き出す。「島から一緒に甲子園へ」との誓いを実現させた2人。大野投手は「うれしさとホッとした気持ちが強い」、西田捕手は「全国でどれだけ通用するか楽しみ」と笑顔を見せた。
初対決は小学4年の時。中学校も別々ながら、大会などで声を掛け合う仲に。球の切れ、マウンドさばき、相手の裏をかくセンスなど、大野投手に一目置いていた西田捕手の思いは募った。「彼の球を受けたい」
中学3年の秋、奄美市の飲食店に初めて両家の家族が集まった。進路について話し合うためだ。ともに島外の有力私立校から誘いを受けていた2人。西田捕手は大野投手に語りかけた。「自分は大島高校に決めた。一緒にやりたい」
島を出るか否か、「追い詰められるほど迷っていた」大野投手はこの言葉で決断した。「甲子園はどこからでも目指せる。行けなかったとしても悔いはない」
進学後、大野投手の球を受けた西田捕手は「これまで受けたどの投手より、切れも制球もいい。リードしやすい」と改めて実感。厳しい練習で着々と力を付け、120キロ台だった大野投手の球速は、最速146キロまで伸びた。
自信を深めたのは、昨年秋の県大会準決勝。強豪・樟南高校の粘りに苦しみながらも「要求通りに投げれば絶対打たれない」「気が強い稼頭央なら厳しい配球ができる」。互いを信じて何度もピンチを切り抜けた。勢いに乗って県大会を制し、九州大会でも決勝へ進出。念願だった甲子園出場をかなえた。
大野投手は言う。「一緒に甲子園を目指す強い決意が結果につながった。他校より信頼関係は勝っていると思う」。培ってきた絆を武器に、全国の強豪に立ち向かう。