洋上風力発電 海洋国・日本が本腰 22海域で調整進む 鹿児島は県本土西岸沖に3事業体が整備構想

2022/02/14 08:39
洋上風力発電の事業計画が持ち上がる薩摩半島西岸=いちき串木野市小瀬町の旧串木野港灯台前
洋上風力発電の事業計画が持ち上がる薩摩半島西岸=いちき串木野市小瀬町の旧串木野港灯台前
 温室効果ガス排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル実現に向け、国が洋上風力発電に本腰を入れている。海洋国日本の潜在力は高いとされ、2040年までに原発45基分に相当する最大4500万キロワットの導入を目指す。全国で計画が相次ぎ、鹿児島では薩摩半島西岸沖で3事業体が整備構想を進める。反対する住民から「景観や生活環境が損なわれる」と懸念する声もあり、地元の理解を得られるかが事業化の鍵となりそうだ。

 資源エネルギー庁によると、国は長崎沖や秋田沖など5海域を施設整備の前提となる「促進区域」に指定。うち4海域で事業者の公募を終えた。促進区域の前段階「有望区域」、さらにその前段階「準備区域」は計17海域に上り、事業者や地元漁協と調整が進む。

 国が洋上風力を急ぐ背景には、有望な再生可能エネルギーになるとの期待のほか、環境外交問題もある。昨年開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、日本のエネルギー依存度が高い石炭火力を「段階的削減へ努力を加速する」とした異例の文書を採択。日本への風当たりは強く、環境省幹部は「早急な対応が必要」と焦りを隠さない。

 岸田文雄首相は先月の施政方針演説で洋上風力をはじめとする環境分野を「官民で投資を倍増させ、脱炭素実現と新時代の成長を生み出すエンジンとする」と表明した。

✲熱視線

 薩摩半島西岸沖は南国殖産(鹿児島市)、三井不動産(東京)、インフラックス(同)の3事業体がそれぞれ整備構想を持つ。先月20日、3事業体の担当者がいちき串木野市議会で概要を説明。「地元理解なしに計画は進めない」とする一方、「鹿児島こそ適地」と意欲を示した。

 想定海域は平均風速が秒速7メートル以上と安定し、収益性が高いとされる。九州電力川内原発(薩摩川内市)のお膝元だが、1、2号機は原則40年の運転期限が迫る。地元周辺からは原発の代替エネルギーとして期待する声もある。

 ただ、事業化への最初のステップとなる「準備区域」に至っておらず、計画には賛否ある。準備区域選定には今後、国が県から想定海域や地元の調整事項などをまとめた「情報提供」を受ける必要がある。

 事業者の視線はおのずと塩田康一知事に向かう。3事業体の幹部の一人は「経済産業省出身で、稼ぐ力をスローガンに掲げる知事は理解を示してくれるのではないか」と話す。

✲慎重姿勢

 同じ原発が立地する佐賀県は唐津沖が21年9月に「準備区域」に選定されている。県新エネルギー産業課は「漁業者の一部で反対はあったが、企業誘致が難しい地元の要望を踏まえ、雇用創出など経済波及が大きいと判断した」と話す。

 塩田知事は先月の定例会見で、再エネ推進の一つに洋上風力を挙げる一方、地元で反対の声があることを念頭に「景観や漁業への影響を把握した上で検討を進める必要がある」と慎重な姿勢を示した。

 名古屋大大学院の丸山康司教授(環境社会学)は「再エネ促進は避けられない社会課題だが、全体の利益のために立地地域は我慢すべきだという押しつけはよくない」と指摘。「立地地域の理解が得られるよう、例えば電気料金を値下げするなど地元に利益が還元される仕組みやルールを行政と事業者が取り決めておくのも有効だ」と提案した。

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