誓いの言葉を述べる松元法香さん=南さつま市加世田高橋
戦時中、南さつま市の旧万世飛行場から出撃し帰らぬ人となった特攻隊員201人の慰霊祭が10日、飛行場跡の万世特攻平和祈念館であった。全国の遺族や若者ら約200人がウクライナの戦闘と戦時を重ね、不戦の決意を新たにした。
主催の万世特攻慰霊碑奉賛会会長の本坊輝雄市長が「世界は軍事侵攻で悲惨な状況にある。1日も早い全面停戦を願う」とあいさつ。戦死した加覧幸男さんの弟の優さん(77)=鹿児島市西千石町=が「兄を思えば残念で心苦しい。戦争は絶対に反対」と慰霊の言葉を送った。
参列者は万年と続く恒久平和を祈る「よろずよに」の碑に献花した。誓いを述べた坊津学園9年(中学3年)の松元法香さんは「平和はいつ壊れるか分からずはかなくもろい」とウクライナ情勢に触れた。「これからの未来をつくる私たちには戦争を後世へ伝え、平和を尊ぶ使命がある」と力強く訴え、大きな拍手が送られた。
鹿屋市今坂町の小塚公園慰霊塔前広場では、旧海軍の鹿屋航空基地特別攻撃隊の戦没者追悼式があった。遺族や自衛隊関係者など約200人が参加し、特攻戦死者908人の冥福を祈った。式典開催は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年以来3年ぶり。
式典は2日あり、高隈中学校3年辻あおいさんが平和メッセージを朗読。「殺人や虐待など現代社会は命に対する意識が薄れつつあるのではないか。尊い命が失われた歴史を学び、いま一度考え直さなければならない」と呼び掛けた。献花では、目に涙を浮かべる人の姿が目立った。
市によると、遺族は県内外から29組71人が参加した。6歳上の兄を亡くした姶良市加治木町木田の米満繁達さん(91)は「特攻隊という不条理な考え方がまかり通った事実を反省し、二度と繰り返してはならない。ロシアのウクライナ侵攻は外国の話ではない。私たちの過去にも同じことが起きていたことを知ってほしい」と訴えた。