こんな時こそ憲法に理解を~♪ ギター手に前文歌う83歳元教師 きょうユーチューブで配信

2022/05/03 11:03
弾き語りをする川野恭司さん(右)と、ユーチューブの出演を依頼した上野康弘さん=鹿児島市名山町
弾き語りをする川野恭司さん(右)と、ユーチューブの出演を依頼した上野康弘さん=鹿児島市名山町
 平和主義の理念を再び歌で伝えたい-。鹿児島市明和4丁目の元中学教師の川野恭司さん(83)は、かつて授業で披露していた憲法前文の弾き語りを、ロシアのウクライナ侵攻を機に再開した。憲法記念日の3日に合わせ、ギターに乗せて動画投稿サイトで配信する。「こんな時こそ、憲法に理解を深めてほしい」との願いを込める。

 川野さんは同市の鹿児島大学付属中学校で社会科教師を27年間務めた。憲法の授業では、ギターを手に「全世界の国民が~ 平和のうちに生存する権利を有する~」と前文を歌ってきた。人が生きる上で大切な平和的生存権の考えに親しんでほしいとの思いからだ。

 80歳を超えて再び取り組んだきっかけは、教え子で同市名山町の「数学カフェ」副店長上野康弘さん(38)からの依頼だった。

 上野さんはウクライナの惨状を見て「日本も武力が必要かも」「戦力不保持を守るのは大切」と気持ちが揺れていた。そんな時、中学時代に聞いた恩師の歌声が思い浮かんだ。戦争体験者の川野さんに、自身が管理するユーチューブチャンネル「学カフェ」への出演を打診。快諾を得た。

 川野さんは幼少期、地元の宮崎県で戦争を経験。逃げまどい、燃える自宅を防空壕(ごう)の中から見た。ラジオで知った終戦の喜びは忘れられない。その後、暮らしは貧しくても、開放感があった。平和主義を掲げる憲法に世の中は歓迎ムード。父母も喜んでいた。

 教師になり、平和について教える際、戦争の悲惨さだけを伝えては効果が薄いと考えていた。そこで平和的生存権にもつながる日々の風景や、人を大切にする優しさに気付かせることに力を入れた。いじめなどの人権問題を考えさせる場面でも、前文を歌ってきた。

 4月26日、同カフェ店内で動画の収録があり、川野さんが演奏するクラシックギターの音色と、柔らかく落ち着いた声の憲法前文が響いた。川野さんは「まずは憲法を知ってほしい。知らずして憲法に賛成、反対は言えない。立場を超えて、それぞれに受け止めてもらえたらいい」と話した。

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