「骨太方針」で格下扱い…岸田政権は食料安保を軽視? ウクライナ侵攻引き金に国会で論戦が活発化

2022/06/06 08:30
食料安全保障の強化の必要性を説明する自民党の森山裕総務会長代行(左)と金子原二郎農相(中央)と=24日、農水省
食料安全保障の強化の必要性を説明する自民党の森山裕総務会長代行(左)と金子原二郎農相(中央)と=24日、農水省
 会期末が迫る今国会で、食料安全保障の議論が活発だ。ロシアのウクライナ侵攻に端を発する世界的な食料不安が背景にある。政府与党内では2023年度概算要求と参院選後に検討する補正予算編成を前に、予算確保に向けたせめぎ合いも活発化している。

 岸田文雄首相は1日の衆院予算委員会で、食料の安定確保は「国家の最も基本的な責務の一つだ」と述べた。前々日の参院予算委では自民議員から「無人島に漂着してどう行動するか」と問われ「水と食料を探すことから始める」と説明、「今後も予断が許されない状況で、食料安保はますます重要になる」と語った。

 自民党内で議論をリードするのは、党検討委員長の森山裕総務会長代行(衆院鹿児島4区)だ。先月末、国会内で鹿児島県内の農業関係者を前に「高騰する肥料や飼料の安定確保は農業県鹿児島にとって死活問題。燃料を含めた総合対策を講じる食料安保の考え方が重要」と訴えた。

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は、地方組織に販売する肥料の価格(6~10月)を前期比で最大9割引き上げる。有数の供給国であるロシアからの調達難が要因。「農家の生産意欲が衰えれば品薄が進み、価格転嫁と合わせ家計を直撃する」とJA関係者。

 物価高への国内不安を受けて政府は、近く閣議決定する岸田政権で初となる経済財政運営の指針「骨太方針」に食料安保の考え方を盛り込む。5月に公表した骨子案では、経済、外交・防衛の両安全保障の項目より“格下”に列挙され、「食料安保の軽視だ」と自民党農林族が激しく反発した経緯がある。農政通の一人は「首相の本気度がいまいち分からない」と明かす。

 一方、野党側も食料安保の基本的な考え方には理解を示す。立憲民主党が3日公表した参院選の公約では、農家への戸別所得補償制度の復活・拡充などを柱とした農山漁村支援の充実を掲げた。

 同党の野間健氏(衆院鹿児島3区)は「食と農を重要と捉える点で、与野党で大きな違いはない」とした上で、「例えば食料自給率、農業産出額がともに高く、日本の食料基地とも言える鹿児島や北海道を食料安保の重要特区に指定して、各種の助成や補助額を優遇するといった大胆な政策が必要」と指摘。自民党の政策は業界団体や大規模農家に寄りがちな面があるとして「小規模農家にも目配りが届くよう、政府与党をチェックしていく」とくぎを刺した。

 ■食料安全保障

 災害や紛争といった不測の事態が生じた場合も、国民が最低限必要とする食料を入手できるようにする政策。日本では国内農業の生産増大を基本としながら、輸入と備蓄を組み合わせることで安定供給の確保を目指している。カロリーベースの食料自給率は低水準にとどまる上、世界的な人口増や気候変動の影響もあり、食料確保への国民の不安は高まっている。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >