橋の上で正月の晴れ着姿の子どもたち=奄美大島
奄美群島は25日、1953年の日本復帰から70年になる。節目の関連行事が相次ぎ、戦後の米軍占領下の奄美大島を訪れた米学者が撮影したカラー写真の巡回展が23日、鹿児島県奄美市のアマホームプラザで始まった。祭りや大島紬など122点が53年12月25日の日本復帰前の息遣いを生き生きと伝える。
巡回展は、鹿児島大国際島嶼(とうしょ)教育研究センターと英オックスフォード大オールソウルズカレッジ主催。今月28日まで同プラザで開き、来年4月にかけて群島内や鹿児島市で行う。
米シラキュース大教授の文化人類学者ダグラス・ハーリング氏(1894~1970年)らが写した写真は色あせず、当時の姿が鮮やかによみがえった。見物客は知人を見つけるなどし、往時を懐かしんだ。
同氏は51年9月から52年3月、軍政府などの要請で島中北部を調査した。大島紬を研究する同カレッジのシャーロット・リントン講師が2019年、同氏に詳しい桑原季雄鹿大名誉教授の情報を基にシラキュース大を訪れ、同氏の写真約980枚や映像を確認した。
「日本復帰記念の日」の25日は、奄美市名瀬の市街地で各種イベントがある。
市民団体はおがみ山と高千穂神社で集会を実施。詩人で復帰運動のリーダー泉芳朗のおい泉宏比古さんを招き、アマホームプラザで講演会をする。市は名瀬小学校校庭で記念の集いを開き、児童が泉の詩「断食悲願」を朗読。ちょうちん行列で練り歩く。記念花火もある。市企画調整課=0997(52)1111。
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奄美市名瀬の古い街並みや晴れ着姿の子どもたちを写した鮮やかなカラー写真がずらりと並んだ。同市名瀬のアマホームプラザで23日始まった米軍占領下のカラー写真巡回展。多くの市民が会場を訪れ、知人や家族の姿を探し、当時の記憶をたどった。
當郷(とうごう)幸子さん(81)=同市名瀬=は父が営んでいた藍染め工場「あたり染色工」の写真の前で立ち止まった。「写っている従業員を1人覚えている。後に独立した」と懐かしむ。
京都の問屋に商品を卸すため、父が偏見を恐れて一文字姓の「當(あたり)」から二文字姓に改名したといい「当時は気付かなかったが、従業員も皆はだしで多くの苦労があったのだろう。写真を見ていると、写っているもの以外の記憶もよみがえってくる」と回想した。
記念講演もあり、写真を撮影した米シラキュース大教授の文化人類学者ダグラス・ハーリング氏に詳しい鹿児島大学の桑原季雄名誉教授(文化人類学)が登壇。同氏が時間をかけて奄美大島全体を調査することを諦め、写真や映像で詳細な記録を残すことを重視したと分析し「彼にとっては不幸だったが、貴重な資料が残り、奄美にとって幸運だった」と語った。
米シラキュース大で写真を確認した英オックスフォード大のシャーロット・リントン講師は11月に来島し住民から聞き取った写真の情報などを紹介。「事実の収集も大事だが、何より写真を見て多くの人に思い出を共有してほしい」と呼びかけた。
巡回展の日程は次の通り。
12月24~26日 伊仙町の総合体育館▽1月4~16日 龍郷町りゅうがく館▽6~14日 知名町のおきえらぶ文化ホール▽21日~2月2日 宇検村の元気が出る館▽1月23~31日 和泊町役場▽2月7~19日 奄美市の奄美博物館▽9~17日 喜界町役場▽24日~3月7日 大和村防災センター▽2月26日~3月5日 徳之島町の生涯学習センター▽3月12~24日 瀬戸内町の図書館・郷土館▽19~27日 天城町のユイの館▽4月9~22日 鹿児島大学