ノジュールを割ると、見えた脊椎動物の骨の一部=2020年11月、鹿児島県長島町獅子島
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
2024年は辰年。鹿児島での新たな恐竜の発見に向けて、私にとってまさに“竜の化石”を追い求める1年になりそうです。
今回から、鹿児島県長島町獅子島で20年11月、謎の化石を発見したお話です。
獅子島西南部に位置する幣串の海岸を東京都市大学の中島保寿准教授と一緒に、化石を探しながら散策していました。04年にサツマウツノミヤリュウを発掘した場所の周辺です。薩摩翼竜を発見した直後で、新たな発見シーンを狙ってNHKの取材班が同行して調査風景を撮影していました。
アンモナイトの化石を幾つか発見したものの、お目当ての脊椎動物は見つかりません。私は取材カメラが回っていてもあまり緊張しないのですが、若干意識することで注意力が散漫になることは否めません。翌朝、リベンジを期して朝食前に一人、同じ海岸を散策しました。
ふと足元を見ると、黒色泥岩層の表面に丸いノジュール(塊)がのぞいていることに気付きました。割ってみると、薄い板状の骨の断面が見えます。私の頭の中に、直感的にある生き物が浮かびました。
旅館に戻って朝食を取りながら、中島さんに骨化石を示して、未確認の海生爬虫類の名前を挙げました。中島さんは少し考えて「大型の魚の骨の可能性も高いので、CTスキャンにかけて鑑定しましょう」と言いました。実際に調べたところ、何と脊椎骨などの重要な部位の化石が浮かび上がってきたのです。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)