閉校相次ぐ看護師養成施設 背景に少子化や職業選択の多様化 人材確保・就職定着へ学校、自治体腐心 鹿児島

2024/03/29 12:47
校歌を斉唱する鹿児島看護学校最後の卒業生たち=鹿児島市
校歌を斉唱する鹿児島看護学校最後の卒業生たち=鹿児島市
 鹿児島県内の看護師養成施設の閉校が相次いでいる。高齢者数の増加や医師の働き方改革が進む県内の医療・介護の現場で看護師のニーズは高まる一方で、人材確保が課題。各養成施設では、医療技術の高度化に対応しようと4年制への移行や、地域への定着を図る動きも進む。

 鹿児島看護学校(鹿児島市)と鹿児島看護専門学校(同)の2校は、31日に閉校する。県医師・看護人材課によると、県内の看護師・准看護師などの養成施設数は4月時点で大学院1、大学3、専門学校など(3年課程)12、高校(5年一貫)6など計27校。2026年3月には久木田学園看護専門学校(同市)、たちばな医療専門学校(霧島市)、肝付町立高山准看護学校が次々と歴史に幕を下ろす。

 県内養成施設の入学者数は20年1619人だったのが、22年1223人、23年1257人と減少傾向にある。「少子化や、看護師の多くを占めていた女性の職業選択が多様化したことなどが背景」と鹿児島県看護協会の八田冷子会長(68)。看護師志望者の大学志向も高まっているという。

 鹿児島市の鹿児島国際大は鹿児島看護学校の運営を引き継ぎ、閉校に先立つ23年4月に4年制の看護学部を開設した。現在、約80人の学生が学ぶ。

 県内で看護を学べる4年制大学は鹿児島大と鹿児島純心大しかなく、県外への人材流出が課題になっていた。同看護学校を運営していた鹿児島医療センターの田中康博院長は「医療が高度化する中で、3年課程では学習量に対して消化不良が起きていた」と話す。

 来月から医師の働き方改革が本格化。一部業務を看護師らに移管する「タスクシフト」への対応も求められる。医師偏在の問題も指摘し、「医師の業務を分担できる、質の高い看護師の育成が必要」と訴える。

 23年3月の県内養成施設卒業者のうち、県内で就職した人の割合は59.6%と全国の73.5%を下回っている。地域で看護師を育て、定着を図ろうと力を入れる施設や自治体もある。

 薩摩川内市は24年度から、市内に転入し川内看護専門学校に入学する学生を対象に、毎月3万円の家賃補助を実施。馬毛島の自衛隊基地建設が進む種子島では看護人材難の解消へ、26年4月、西之表市に島内初の看護専門学校が開校する。

 鹿児島市の鹿児島医療技術専門学校は、15年度から3年課程のカリキュラムを4年間で教える。4年制になったことで離島実習や、桜島の大規模噴火訓練に参加する時間を割けるようになった。導入以降、60~70%だった卒業後の県内定着率は80%前後に増えたという。同校谷山キャンパスの浜川孝二副校長は「地元で活躍したいと思える学生が増えれば」と期待する。

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