砕けた恐竜の骨を含むボーンベッド(宇都宮聡さん提供)
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
日本古生物学会が6月22日、高知市の高知大学朝倉キャンパスであり、東京都市大学の中島保寿准教授が、鹿児島県長島町獅子島で進めている化石と地質調査の中間発表を行いました。現地調査に携わった都市大学の学生と共に、ボーンベッド(骨化石の密集層、以下BB)発見者の私も、今回の発表資料の共著者として立ち合いました。
獅子島東部の海岸には、白亜紀下部アルビアン期(約1億1千万年前)に堆積した、厚さ100メートルにも及ぶ陸成層(陸地で堆積した地層)が連なっています。むき出しの地層が険しい崖として続く、日本では珍しい景観です。われわれはこれまでに、この地層から3層の脊椎動物化石のBBを発見しました。
発表では第1、3BBは赤灰色の砂質泥岩からなり、バラバラになった恐竜の骨が含まれていることを紹介しました。白亜紀当時は蛇行する河川が時折氾濫する場所で、それに巻き込まれた恐竜などの陸生動物の死体が散在していたと説明。乾燥する時期に風化で骨が砕け、一部は石灰質のノジュール(塊)を形成したとの考えを示しました。
ワニの歯に似た化石を産出した第2BBは、川の流れで自然に形成された堤が大雨などで決壊した際にできた、砂岩を主体とした地層と考えられ、第1、3BBとは形成過程が違うことも明らかにしました。会場の研究者からは、地層が堆積した当時の環境が推定できる化石の存在などについて、質問が出ました。
今回の発表を通し、獅子島東部の陸成層には恐竜をはじめとする多様な動物群が含まれていることを再確認しました。前期白亜紀末のアジア大陸に生息していた恐竜などの種類を明らかにする上で、獅子島が国内有数の重要な化石産地であることを学術的に明確にでき、研究者に認知してもらえた意義ある発表になりました。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)