新体育館計画は知事3代に渡り立地場所が迷走、ようやくこぎ着けた入札は参加ゼロ 知事は“新たなブレーキ”にどう向き合う?〈知事の一問一答あり〉

2024/09/28 11:30
鹿児島県が新総合体育館を計画するドルフィンポート跡地(中央)。現在は更地になっている=1月8日、本社チャーター機から
鹿児島県が新総合体育館を計画するドルフィンポート跡地(中央)。現在は更地になっている=1月8日、本社チャーター機から
 鹿児島県の新総合体育館整備は15年余りにわたり、立地場所や構想自体が二転三転してきた。塩田康一県政になって入札にこぎ着けたが、資材や労務費の高騰を背景にした不調という新たな形でブレーキがかかった。計画の見直しは避けられず、関係者からは「着地点はあるのか」とため息が漏れる。

 入札を締め切った27日午前11時過ぎ、県議会本会議場にいた塩田知事らは落ち着かない様子だった。休憩中に不調を知ったからだ。県幹部の一人は「長い時間と労力をかけて入札にたどり着いたのだが。忸怩(じくじ)たる思いだ」と唇をかんだ。

■2度目のDP跡

 現在の県体育館が完成したのは1960年。老朽化や手狭さが指摘されてきた。当初2020年の予定だった鹿児島国体(23年開催)をにらみ、新設論議が加速した。

 伊藤祐一郎知事時代の08年、県庁東側での新設を表明したのが皮切り。多目的機能を持たせるとして、鹿児島港本港区のドルフィンポート(DP)跡地に変更する構想を打ち出したが、急な方針転換に批判が集まり撤回に追い込まれた。

 その後の三反園訓県政で県工業試験場跡、県庁東側と移ろい、20年就任の塩田知事が仕切り直して再びDP跡に落ち着いた。立地が改めて争点となった今夏の知事選も制し、入札を迎えた。

■街づくりに波及か

 事業費313億円-。物価高の基調を踏まえて県が算定した額だ。県内外の事業者でつくる2グループが応札に意欲を示していた。関係者によると、雲行きが怪しくなったのは最終見積もり段階の8月。業者側から「設備工事費が高騰している」と県に連絡が入った。

 情報は県内政界にも広がり、「見通しが甘かった」「物価高で生活が苦しい中での事業費増は認められない」(複数の県議)との声が出る中での不調。塩田知事は増額をはじめ、機能、規模、民間資金を活用した整備・運営手法を見直す可能性に言及した。

 またも迷走するのか。早期整備を要望してきた県屋内スポーツ競技団体の長井忠道事務局長(78)は不調を残念がりつつも「規模を縮小する事なく事業を進めてほしい」と注文。一方、お膝元である鹿児島市の幹部は29年に予定する開業の遅れを懸念する。「周辺を含め土地をどう使うかが変わってくる。場合によっては、街づくりも見直さないといけない」

 新体育館の見直し議論は10月1日の県議会文教観光委員会からスタートする見通し。柴立鉄平委員長は、不調の原因解明が重要とし「まず県と事業者双方の見積もりにどれだけ乖離(かいり)があるか調べる必要がある」と指摘した。



 鹿児島県の塩田康一知事と報道陣の主なやり取りは次の通り。

 -入札が不調だった。

 「さまざまな議論をして、事業者とも意見交換を重ねていたので残念」

 -事業費313億円は妥当な金額だったか。

 「コンサルタントの意見も聞きながら積算し、5月時点では入札表明もあった。人件費高騰で難しいという声を聞いた8月までは妥当な額だった」

 -2029年7月の開業は遅れるか。

 「現時点では分からない」

 -事業費や規模、整備・運営手法は見直すのか。

 「事業者に聞き取りをして考える。全国大会を開催するための必要最小限の規模なので縮小は難しいと思う。増額や規模、機能、整備・運営手法の見直し事例が他県であるので検討する」

 -県議会は事業費が県民の負担にならないよう求めてきた。

 「過大なコストで負担にならないように精査することが必要だ」

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