衆院選は15日公示され、12日間の選挙戦の火ぶたが切って落とされた。鹿児島県内12候補の第一声を分析すると、与野党問わず多くが自民派閥の裏金事件に端を発した「政治とカネ」問題や政治不信の払拭に時間を割き、攻防を繰り広げる姿が鮮明だ。物価高をはじめとする経済対策、人口減が深刻な地方の活性化なども主なテーマに挙げ、票の掘り起こしへ懸命となっている。
◇1区
自民前職宮路拓馬さん(44)は、鹿児島市の「かんまちあ」で第一声を上げた。裏金問題について「石破茂首相が下した処分を丁寧に説明し、再発防止を訴える。信頼回復の最前線に立つ」と険しい表情。最も長い時間をあてた人口減対策について「多様で公正な社会を実現して新しい発想、工夫を生み出す。新しい政治をみなさんとつくる」と語気を強めた。会場は地方議員や首長らが集結した。
立憲民主前職の川内博史さん(62)は鹿児島市の甲突川右岸緑地で「裏金や能登半島の問題を置き去りにした総選挙」と自民党の政治姿勢を批判。地方議員や浪人中に地域回りで出会った人々が見守る中、所得向上を中心に政策を論じた。「消費税を停止、インボイス制度を廃止すれば手元のお金が増える。生活に寄り添う政治にしていくため、絶対にこの選挙に勝つ」と力を込めた。
参政新人昇拓真さん(34)は鹿児島市の中央公園で農家や会社員、ユーチューバーらを前に約4分半熱弁。国政政党となった党の紹介に時間を割き、「投票したい政党がない人のために作った」と強調した。
◇2区
無所属前職の三反園訓さん(66)は、鹿児島市谷山中央3丁目の港緑地公園で第一声を上げた。谷山や南薩地区の支持者らが集まった。演説は約9分間。「政治の主役は国民。思いを反映する」と訴え、年金暮らしの高齢者や消防団、若手農業者らの声を国会に届けてきたと政治姿勢や実績を計5分間にわたってアピールした。
自民前職の保岡宏武さん(51)は、約16分話したうち冒頭の8分間、「政治とカネ」について語った。派閥裏金問題を受け、党内で発言してきたことや農林水産業の振興で地方創生を進める政策を説明した。同市谷山第二中央公園には自民の友好団体関係者らが集い、自民市議や奄美の町村長らも駆けつけた。
参政新人の矢竹ゆかりさん(61)は同市山下町の中央公園で1区の候補と街宣車を並べて第一声。2分のうち政治改革に1分を費やし、「失われた30年に終止符を打ち、若者にバトンを引き継ぐ」と訴えた。
共産新人の松崎真琴さん(66)は同市谷山第一中央公園で開いた出陣式で、11分間のうち4分を経済対策に充てた。派閥裏金問題を「腐敗政治」と批判、県内で進む自衛隊施設の整備に反対した。
維新新人の辻健太郎さん(38)は同市南部の商業施設前で約3分間演説した。米国での経験や携わった事業を紹介し、「鹿児島だけが持つエネルギーを、テクノロジーとともに世界へ発信していく」と訴えた。
◇3区
立憲民主前職の野間健さん(66)は薩摩川内市役所近くの公園で第一声を上げ、約8分30秒のうち約3分を政権批判に充てた。自民党の政治資金パーティー裏金事件や能登半島地震の復興が進まない中での衆院解散に触れ「そろそろ転換させなければいけない」と呼びかけた。選挙については「巨大な組織との戦い」として結束を呼びかけ、一人一人と握手を交わしてから選挙カーに乗り込んだ。
小選挙区での雪辱を期す自民前職の小里泰弘さん(66)は、JR川内駅近くの広場で出陣式。約16分の半分以上の約10分を割いて、地方の活性化に取り組む決意を述べた。地域活性化担当の首相補佐官として全国行脚した経験も強調し「地方から変える」と繰り返した。農相の職務を「生命を賭して全うする」とし、自民党の政治と金の問題については「さらに政治資金の透明化を図る」と誓った。
◇4区
自民前職森山裕さん(79)の鹿屋市での出陣式には首長やJA関係者らが多数出席。党幹事長を務める本人は不在で約4分半の動画を流した。そのうち2分以上を大隅、霧島、熊毛地域が担う役割に充て、食料安全保障や観光振興の重要性に触れた。ウクライナ侵攻など厳しい安全保障環境に40秒を割き「政策は現場にある」との自身の政治信条も強調。裏金事件や物価高対策への言及はなかった。
霧島市で出陣式を開いた社民新人山内光典さん(73)は約10分の演説中3分半を西之表市馬毛島の自衛隊基地整備反対に充てた。基地が攻撃対象となるリスクを高めるとし「抑止力につながらない」と訴えた。農業所得の向上など地場産業活性化には1分50秒。低投票率は自民を利するとも指摘し「5割に満たない投票率で世の中は変えられない。選挙で意思表示することが重要だ」と呼びかけた。