自立の助けを…通常学級に在籍していても抱える「困り感」がある。「子どもの自信につなげてあげたい」。教員の巡回指導が始まった

2024/11/11 06:03
男児に「自立活動」の授業をする大塚佳子教諭=姶良市の姶良小
男児に「自立活動」の授業をする大塚佳子教諭=姶良市の姶良小
 発達障害の子どもたちへの指導や支援を含めた特別支援教育がスタートして今年で18年目となる。学校関係者や保護者らに広く知られるようになり、特別支援学級などで学ぶ児童生徒は急増。教員不足や学びの質といった課題も見えてきた。鹿児島県内の現状を報告する。(シリーズ・かわる学びや@鹿児島~特別支援教育の今=10回続きの④より)

 トランポリンで飛びはねて体幹を鍛えたり、書くために必要な腕力が付くように新聞紙を両手で裂いたり-。9月下旬、姶良市の姶良小学校では、自閉症スペクトラム障害の傾向がある2年生の男児が、通級指導教室担当の大塚佳子教諭(52)から1対1で授業を受けていた。「自立活動」と呼ばれるもので、学習や生活上の困難を克服するための特別な指導だ。

 県総合教育センターの授業モデル研究に協力する大塚教諭は、担当する児童の学級担任や保護者に聞き取りを重ね、「困り感」などの把握に力を入れる。「苦痛にならず、楽しんで力を付けられるよう工夫している。ほっとできる居場所にもしたい」と話す。

 通級を希望する保護者は右肩上がりで、他校から指導を受けに通う児童もいる。自校生は1人当たり週2時間を1時間に減らし、日常のケアで対応するようにした。「一人でも多く、子どもができることを増やして自信につなげてあげたい」と意欲を語る。



 通級指導も特別支援教育の一環だ。通常学級に在籍しているが軽度の障害がある児童生徒らを対象に、さまざまな自立活動が行われている。県教育委員会によると、県内の公立小中学校と義務教育学校で通級を利用する児童生徒数は、2007年度は小学校のみの622人だったが、24年度は1567人(小学1486人、中学81人)に上る。

 2.5倍増だが、全国の国公私立の小中学生では22年度19万6288人に上り、07年度の4万5240人から4.3倍と倍近いペースだ。全国より伸びが緩やかな要因を、県教委特別支援教育課は県域の広さにあると推測する。財政上、すべての学校には通級教室を置けない。自校にない場合は他校へ通う必要があり、保護者の送迎が欠かせないことや、その間は授業を受けられないこともネックになっている。



 打開策として期待されるのが、配置されている学校の教員が巡回するスタイルだ。県教委は本年度、薩摩川内、鹿屋、奄美の3市でモデル事業を始めた。

 薩摩川内市の入来小には、市内だが片道40分はかかる亀山小から、池水晃教諭(39)が週に1度来校。3年生2人が、板書や行動の切り替えなど、苦手を克服するための授業を受ける。

 川邊浩幸校長(59)は「送迎できない保護者もおり、事業のおかげで通級が受けられると喜ばれた」と感謝する。池水教諭も「普段の学校での様子を見られて授業に生かせる」と語る。

 モデル事業は、3年かけて運営システムづくりや改善を重ね、すべての市町村での導入を目指している。

 ◇通級指導教室とは 小中高校で、通常の学級に在籍している児童生徒に対し、大部分の教科の指導は通常学級で行いつつ、障害に応じた特別の指導を行う場。「注意欠陥多動性障害(ADHD)」や「学習障害(LD)」などの軽度の障害の子どもが対象となる。「言語障害」「LD・ADHD」「自閉症・情緒障害」「難聴」と障害の種別でクラスが分かれる。鹿児島県内の公立小中学校と義務教育学校では2024年度、通級担当教員は115人(小学101人、中学14人)。女性が68.7%を占める。年齢構成は50代が49.6%と最も多い。

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