観客とスタッフと出演者と、みんなで作る映画祭なんです!
■「俳優・迫田孝也(鹿児島市出身)のオモ語り」=南日本新聞2024年11月10日付
国際映画祭って聞くと、タキシードやドレスを着てレッドカーペットの上を優雅に歩くあの光景を思い浮かべますよね。でもこの映画祭は一味違うんです。もちろんセレモニーなど華やかな一面もありますが、元々は子どもたちに映画や音楽など文化を“体験”してほしいという思いで始まった映画祭なんです。第1回の開催が1992年。30年以上も続く歴史ある映画祭だったとは、私も今回初めて知りました。2016年からは世田谷区の二子玉川で映画館、イベントスペース、さらには飲食店や河川敷など、まさに街ぐるみで楽しめる映画祭として地域に根付いています(興味のある方はぜひ調べてみてください)。
キネコ国際映画祭といえば、上映される作品に、その場で吹き替えをしていく”ライブシネマ”が名物です。国際映画祭ですから、世界の多種多様な言語で作られている作品が多く、これに日本語字幕や吹き替えをつけるだけで膨大な時間と労力が必要です。これを逆手にとったのがこのライブシネマ。プロの声優さんだけでなく、一般の方からも参加者を募集して声優体験してもらう。子どもたちは臨場感あふれる中で、より映画の世界を堪能でき、よりフレッシュな一体感を感じることができるというわけです。映画の内容も楽しい作品だけではなく、いじめや性にまつわるものまで親子で一緒に見て真剣に学べる映画祭なんです。
今回、私の参加したライブシネマは、インドネシアの監督が製作した「きゅうりの村」という短編映画とあの「機関車トーマス」。きゅうりの村は3人姉弟とニワトリの面白おかしなやりとりの話で私はニワトリの役です。コケコッコーやコケッ、ココッ、コケコンカーッ(勝手に鹿児島弁風に)という鳴き声だけで感情を表現するのはわっぜ難しかったですね。機関車トーマスではあの落ち着いたトーンでおなじみのナレーター役。本番を迎えるまでは不安でしたが、いざ始まってみると子どもたちがキラキラした目で映画を楽しんでいるのを見て、参加できて良かったなあと心底思いました。せっかくのご縁なんで、来年以降も参加して、映画祭のノウハウを学び、そしていつの日か鹿児島で映画祭をやるという新しい夢が生まれましたよ。