石破茂首相は29日の所信表明演説で、日本の活力を取り戻し多様な幸せを実現するための政策として「地方創生の再起動」を進めると強調した。各地の成功事例を全国に広げる必要があるとし、一例として合計特殊出生率を伸ばした鹿児島県伊仙町を紹介した。
同町は2003~12年、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数が「2.42」「2.81」と全国1位を誇った。町長が集落を回り財政状況を説明し、出産や子育て環境の充実を図ったことが要因とし、「一つの『まち』の物語にとどめてはならない。成功事例から学び、デジタル技術活用や規制・制度改革を大胆に進める」と訴えた。
衆院本会議後、記者団の取材に応じた自民党の森山裕幹事長(鹿児島4区)は「演説は非常にわかりやすい内容。わが党としては政府や各党とも連携を図り、着実に政策を進めることが大事だ」と評価。「首相は人口が最少の鳥取県が基盤。都市部と地方との連携も含め、地方創生をしっかりやろうという気持ちを強く感じた」と振り返った。
一方、立憲民主党の川内博史衆院議員(同1区)は「夢物語だ」と断じた。公共交通が減り、商店街はシャッターが並ぶ地方の現実を直視すべきだとし「輝かしい成功事例だけを追い求め、物価高にあえぐ地方の暮らしに何が必要なのか、その議論から逃げている」と語った。