エンジン関連のトラブルで欠航が続く「フェリー屋久島2」=11月30日、鹿児島市本港区南ふ頭
鹿児島県本土と屋久島を直通で結ぶ「フェリー屋久島2」(3392トン)が欠航して2カ月近く経過した。屋久島では生鮮食品を中心に供給が減り、宅配便の遅れも目立つなど住民生活に影を落とす。運航する折田汽船(鹿児島市)によると、再開時期は未定。冬場の特産品出荷を控え「いつまで続くのか」「行政の支援は」と、地場産業への影響を懸念する声も漏れる。
「種子島から帰省した娘に『屋久島は物が何もないね』と言われた」と話すのは屋久島町吉田の園田千鶴さん(51)。「パンや乳製品といった身近な食材が手に入らないこともある。早く復旧して」と困り顔だ。
同町小島の60代女性はネット通販を日常的に使っているが、自宅に商品が届くまで2~3週間かかるようになった。「2、3日で届くからネット注文するのに、今は配達予定日も分からない」とこぼす。
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屋久島2はエンジン機器のトラブルで10月5日から欠航が続く。物資輸送では、鹿商海運(鹿児島市)のフェリー「はいびすかす」(1798トン)もあるが、種子島行きも兼ねるため屋久島向けの積載量は限られる。同社の貨物船「ぶーげんびりあ」(999トン)が週2~3日臨時運航するものの、屋久島2を補えるほどではないのが現状だ。
同町安房で青果店を営む田中繁治さん(68)は、学校給食や福祉施設の食材調達も担う。「島内の流通システムが崩れ、綱渡りの状況。民間がだめなら、すがるのは行政しかない」
住民からは、種子島-屋久島-口永良部島間を運航する町営船「フェリー太陽Ⅱ」の転用を求める声も上がる。しかし、実現へのハードルは高い。町は「口永良部島の生活支援という目的から外れると、国の補助が受けられない可能性が出てくる。航路申請の手続きも複雑だ」と説明する。
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年末ギフトで知られる屋久島ポンカンは5日から出荷が始まる予定。生産量300トン超のうち、JA種子屋久屋久島支所は例年約100トンを取り扱う。鎌田忠明経済課長(49)は「これまで通り出荷できなければ信用問題になる。スーパーなどの売り場が減らされかねない」と危機感を抱く。屋久島漁協では、従来通りの出荷が見込めないとして、出漁を見合わせて調整する動きもある。
折田汽船によると、修理に必要な部品が受注生産のため時間がかかっている。代替運航する「ぶーげんびりあ」は西之表市馬毛島の自衛隊基地整備の資材運搬用に導入した経緯があり、関係者は「屋久島2が再開するまで続けられる保証はない」と明かす。
昨年末の十島村営船の火災で長期欠航が生じた際は、競合のない単独航路で国の補助もあり行政も支援しやすかった。屋久島航路は単独ではないため補助もなく、支援の在り方が難しい側面もある。県交通政策課は「屋久島2は島民の生活や経済の重要な移動手段。再開まで大きな影響が出ないよう、町や代替運航業者と連携したい」としている。
■フェリー屋久島2
1993年就航。鹿児島と屋久島を毎日1往復している。今年5月には船員不足で運休日を設けた。8月には解消したものの、物資が比較的少ない日曜日は繁忙期を除き運休する。10月4日の定期点検で、エンジンの回転を落とす「減速機」とエンジンを接続する部品に亀裂が見つかり、同5日から欠航を続ける。