マイクオフ問題で国の姿勢問われた水俣病、誰一人こぼれ落ちない政治決着なるか 解散総選挙で躍進の立民が救済法案再提出へ 識者は実のある中身を注文、他党と連携見通せず

2024/12/07 18:00
水俣病救済法案の提出後に会見する立憲民主党の議員=6月18日、国会
水俣病救済法案の提出後に会見する立憲民主党の議員=6月18日、国会
 水俣病問題の解決に向け、立憲民主党は3度目の「政治決着」を模索している。救済法案が先の衆院解散で廃案になり、再提出する予定だ。水俣病特別措置法に基づく救済策の再開や健康調査の実施を盛り込むが、他党の協力が得られるかは見通せない。

 「先の通常国会は(法案を)出すことが第一だった。選挙後は関心を持っている党で集まり、より大きな勢力として法案が出せる形にしたい」。衆院解散前日の10月8日、立民環境部門長(当時)の近藤昭一衆院議員は取材にこう答えた。

 水俣病公式確認の日の5月1日、患者・被害者団体と環境相との懇談で、環境省職員が団体側の発言中にマイクの音を切る問題が起きた。その後の立民の現地ヒアリングで、団体側は議員立法による新たな救済策を要望。通常国会会期末の6月18日、立民は衆院に単独で法案を提出した。

 2009年施行の特措法は、一時金支給などの救済措置の対象者を3年以内をめどに確定するとし、申請を12年7月で締め切った。

 法案は未申請者に対する救済措置を明記。疫学を含む健康調査を2年間実施し、終了後1年以内に特措法を抜本的に見直すとした。

 筆頭提出者だった近藤氏は「被害者は高齢化している。問題提起としてまずは党としての考え方を示した」と語る。改選後は衆院の環境委員長に就いた。

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 水俣病の救済で、国は過去に2度「政治決着」を図っている。1995年、与党3党(自民、社会、さきがけ)が最終解決策を示し、裁判の取り下げなどを条件に約1万人に一時金などが支払われた。2回目が約3万8000人が対象となった特措法に基づく対応だ。

 居住地域や年齢で「線引き」した特措法の救済から漏れた人たちが、国や原因企業に損害賠償を求める訴訟は現在も続く。昨年9月の大阪地裁は原告128人全員を、今年春の熊本地裁と新潟地裁は原告の一部の水俣病罹患(りかん)を認めた。

 立教大学の関礼子教授(環境社会学)は「特措法に基づく救済策の申請を再開するなら、恒久措置でないと根本解決にならない。公害健康被害補償法の認定基準が厳しく、それを補う形の救済策が時限措置である限り、必ずこぼれ落ちる人がいる」と指摘する。

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 立民は単独提出した救済法案について、中身を再検討した上で次期通常国会に再提出する方針。他党との共同提出も視野に入れているが、関係者の一人は「他党との協議や調整はこれから。うまく進むかどうかは分からない」と話す。

 超党派の「水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会」は今月11日、一刻も早い被害者の救済に向けた院内集会を開く。衆院選前に約50人だった加入者をさらに増やそうと、全国会議員に改めて参加を呼びかけた。

 事務局長の野間健衆院議員(鹿児島3区)は「被害者の期待も大きい。次で必ず最終解決にしないといけない」と力を込める。

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