自分たちの研究課題について意見を交わす教員たち=薩摩川内市の川内南中学校
教員の働き方改革は、負担軽減ばかりがクローズアップされがちだが、授業改善も狙いの一つだ。鹿児島県薩摩川内市の川内南中学校は2022年度から改革に取り組んできたが、さらに本年度からは教職員が自ら課題を設定した自主研修を年間を通じて実施。成果を授業に採り入れることで、生徒の学力向上などが期待される。
「ここは2分の1じゃないかな」「もう1回解いてみるよ」。問題の解き方を議論する生徒たちの傍らでは、終えた生徒が別の問題に取りかかる。11月下旬、2年数学の授業は、生徒が自分に合った方法やペースで学ぶ「自由進度学習」で進められていた。
教室で様子を見て回る廣(ひろし)玲門教諭(44)は、事前に4種類のワークシートと、早く解き終えた生徒向けの課題を準備。正解にたどり着けない生徒には助言を行い、ヒント動画も用意していた。
自由進度学習を導入したのは6月に続き本年度2回目。日頃の授業で一部取り入れることもあるという。廣教諭は「初めは少し戸惑う生徒も見られたが、今は主体的に学ぼうとする姿勢が定着しつつある」と変化を感じている。
自主課題研修のうち数学の自由進度学習班に所属。この日の授業は、その成果を検証する場だった。研修班にはこのほか、「学び合いの充実」「ICT(情報通信技術)活用」などがある。各班教職員3~5人で放課後などを活用し、授業改善に向けた議論を行う。
「絆づくり・仲間づくり」班は、新たな不登校生を生み出さないための授業を研究する。誰とでも苦手意識を持たずに話せるよう、生徒同士の対話を重視したペアワークなどを採り入れた浜野航平教諭(43)は「全ての試みがうまくいったわけではないが、生徒同士の距離感が縮まった印象はある」と手応えを語った。
川内南中は昨年度、文部科学省の働き方改革事業に参加。民間コンサルからノウハウの提供や助言を受けながら、業務の見直しを行ってきた。プリントの印刷など教員でなくてもできる仕事は、学校校務支援員や保護者らの手を借りるよう改めた。
業務の見直しなどによって生み出した時間を使って、教員は授業や教材などの研究に力を入れられるようになった。自主課題研修を提案した松本眞一校長(57)は「問題意識などを持ち主体的に取り組むことが大切。その成果を生徒たちに還元してほしい」と期待を寄せた。