公安委員会は形骸化している…警察改革を徹底議論した四半世紀前の教訓はどこへ。欠ける客観視点、真のお目付け役へ組織は変われるのか

2024/12/28 18:03
警察署協議会で要望を伝える委員(奥)=11月6日、鹿児島市の鹿児島南署
警察署協議会で要望を伝える委員(奥)=11月6日、鹿児島市の鹿児島南署
 鹿児島県警の不祥事を巡り、県警を管理する「県公安委員会」の在り方が問われている。県民の代表と位置付けられ、警察業務に県民の考えを反映させるという任務を負うが、活動内容が知られる機会はほとんどなく、機能しているか疑問視する声もある。連載「検証 鹿児島県警」の第2部は、県公安委の実態を捉え、県警の信頼回復へ果たすべき役割を考える。(連載・検証鹿児島県警第2部「問われる公安委」④より)

 公安委員会制度の役割に、過去にも大きな注目が集まったことがある。1999年から2000年にかけて、神奈川県警本部長が警察官の覚醒剤使用を隠蔽(いんぺい)した事件や、新潟県警本部長による接待マージャン問題などの不祥事が相次ぎ、信頼回復へ進められた「警察改革」の時だ。

 同年、国家公安委員会の要請で、弁護士やジャーナリストなど有識者6人でつくる「警察刷新会議」が発足。国民から「公安委員会は形骸化している」との批判があることを念頭に、警察に対する管理の在り方が議論された。

 11回の会議を踏まえ、国家公安委に向けた「緊急提言」では、公安委の監察点検機能や管理能力の強化に言及。「警察本部長による監察が十分でないときは是正すべきであり、第三者機関的な監察点検機能を果たすことが重要」とした。また、公安委を「活性化」すれば、他の第三者機関による監察は必要ないと結論付けた。

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 提言を受けた国家公安委と警察庁は同年、警察が取り組むべき施策を「警察改革要綱」として取りまとめ、公表した。市民の声を理解、反映する必要があるとして、「警察署協議会」の設置を柱の一つに据えた。

 協議会は基本的に各警察署に置かれる。鹿児島の場合、27署全てにあり、地域事情に精通する住民などを県公安委が委員として委嘱する。任期は2年。公安委とは別の視点から、警察業務に対して意見する役割がある。

 11月6日、鹿児島市の鹿児島南署であった協議会では、委員から、不審な訪問販売への対策や道路標識の早期修繕などを求める声が上がった。署側は地域の治安状況などを説明した。

 この日の前日、前県警生活安全部長から「隠蔽疑惑」を指摘された野川明輝本部長(当時)が県警から転出した。信頼回復に向けた活動を求める委員はいたが、疑惑に触れる場面は見られなかった。

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 警察改革では、公安委や警察署協議会の「客観視点」が重要だと確認された。それは今も生かされているのか。同志社大学政策学部の太田肇教授(組織論)は「組織内部に切り込み、問題の核心を捉えられる主体は、現時点ではないと言っていい」と厳しい。

 理由に、警察組織の閉鎖性と業務内容の専門性が障壁になっていると指摘する。「公安委も協議会も警察行政に関しては全くの素人。住民目線で警察に意見するという理念は分かるが、実際は警察の報告ありきの活動になっているというジレンマがある」

 いずれの機関も、人選における抜本的改革が必要とした上で、「警察に厳しい態度で臨める組織や団体から候補者を募るなど、仕組みの再考が求められる」と提言した。

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