PTA費は〝第2の財布〟じゃない 教室のエアコン設置、維持費も負担 他県は公費に移行するが鹿児島県教委は「PTAの要望だから」

2024/12/30 06:03
エアコン費用の負担を保護者に呼びかける、ある県立高校PTAの文書(画像は一部加工してあります)
エアコン費用の負担を保護者に呼びかける、ある県立高校PTAの文書(画像は一部加工してあります)
 保護者と教職員でつくる任意団体PTAが岐路に立たされている。少子化で学校の統廃合が進み、学校単位のPTA数は右肩下がり。共働き世帯が主流となり、活動を負担に感じる保護者は少なくない。全国では上部団体を脱退する動きも広がる。鹿児島県内の現状を追った。(連載「岐路に立つPTA~鹿児島の現場から④」より)

 「負担は大きくなるばかりだ」。ある鹿児島県立高校のPTA会長(52)は嘆く。同校は数年前、生徒から要望があったエアコンを十数台、普通教室に新設。リース代や電気代など年間約690万円は、PTAが生徒1人あたり1万円を保護者から集めて負担した。

 電気代高騰や生徒減少の影響で、現在は年間1万4000円に上る。このほか部活動支援などに充てる学校後援会費もあり、会員から悲鳴が上がっている。

 同窓生でもあるPTA会長は「わが子や後輩のためにとの思いはあるが、いつまでもPTA予算が“第2の財布”として頼られていては、いずれ立ちゆかなくなる」とこぼす。

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 県教育委員会によると、県立高61校のうち52校の普通教室はエアコン設置を含む全費用を、PTAや同窓会が負担している。2022年度に県予算で設置した6校も維持費は同様だ。

 防衛省予算で措置する鹿屋市の3校を除いた58校の平均負担額は生徒1人あたり月811円。設置台数や生徒数によって300~2000円と格差は大きい。県教委はPTAの要望で設置している事を理由に、維持費はPTA負担としている。

 疑問の声は教員からも上がる。県立高に勤める40代男性教諭は昨年9月、「同意なく給与から引かれた」として会費の返還を求め、鹿児島簡裁に提訴した。公費で賄うべき学校関連費に、会費が使われている事も納得できなかったという。

 鹿児島県教職員組合の田中誠書記長(54)も「会費の妥当性や活動の意義を、教員にも丁寧に説明する必要がある」と指摘する。

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 全国では、エアコンの維持管理費を公費負担に見直す動きが広がる。徳島県は23年度から県立高33校の費用を県が負担。リース代約1億6000万円も肩代わりしている。

 同県教育委員会の調査(22年7月現在)では36都府県が公費で賄う。担当者は「負担軽減や格差是正の観点から予算化した」と説明する。長崎や熊本も23年度から県予算に組み入れた。

 「隠れ教育費」の共著がある、千葉工業大学の福嶋尚子准教授(教育行政学)は「『自発的な寄付なら受け取ってよい』とする地方財政法の例外規定を根拠に、私費負担ありきで学習環境を整備している」と批判する。寄付が前提では、地域、学校ごとに格差が生まれかねない。「教育条件を平等にそろえられる負担の在り方を検討すべきだ」。指摘は喫緊の課題だ。
=おわり=

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