桜島フェリーから下船する乗客や車両=29日午後2時すぎ、鹿児島市の鹿児島港桜島フェリーターミナル(田中公人撮影)
鹿児島市が10月からの桜島フェリー深夜運航廃止を発表した29日、住民や利用者からは、緊急事態への対応が担保されていることもあり「やむなし」と理解を示す声が聞かれた。一方、これまで減便、運賃値上げが繰り返されてきただけに、さらなる経営改善を求める意見も出た。
桜島からフェリーを通勤で利用する会社員堂地一美さん(53)=持木町=は「不便になるが仕方ない。運賃の再値上げや昼間の減便よりはまし」と受け止める。年1、2回、飲み会帰りに深夜便を利用することがあり、「10月以降は早めに切り上げざるを得ない」と話した。
市側は今回、救急搬送などに備えて深夜帯に桜島側に船を待機させる方針。
介護が必要な高齢の親がいる桜島藤野町の60代男性は「余計な燃料を使わず、急患対応もあるので深夜帯廃止には賛成。むしろ赤字が続く中、対策をしてこなかった経営に憤りを感じる」と語る。待機案は住民や職員から上がっていたとし、「運賃値上げや減便、人件費削減のほかにもできることがある。市や船舶局は知恵を絞って企業努力を続けてほしい」と注文した。
物流への影響も想定される。市中央卸売市場魚類市場(城南町)では、一部の漁業者や運送業者が深夜帯の桜島フェリーを利用し、早朝までに大隅半島から鮮魚を搬入している。卸売業の30代男性は「(フェリー利用は)そう多くはないが、搬入時刻や輸送ルートの見直しが必要になるだろう」と話した。