卒業式を迎えた学生たちでにぎわう鹿児島県立短期大学。開学以降、計1万6967人が巣立った=24年3月18日、鹿児島市下伊敷1丁目
学生募集に苦戦する鹿児島県立短期大(鹿児島市)の活性化に向け、県が設置した有識者による検討委員会は、2月にも提言書をまとめる。「四年制化は前提としない」という県の意向をくみながら進んだ議論。かつて改革を訴えた元学長は、どう見ているのか。2016~19年度に学長を務めた野呂忠秀さん(74)に課題や理想像を聞いた。(連載「県短大活性化~元学長の提言」㊥から)
-鹿児島県立短期大(鹿児島市)の活性化に向け、県が設置した検討委員会での議論をどう見ているか。
「短大という仕組みの中で限定的に審議し、内部を少し変えるだけでは不十分だ。今の社会のニーズに応えきれない。鹿児島の高等教育全体を見直す視点で議論しない限り、県短の発展的進化は難しい」
-学長時代に「県短の在り方を考える会」をつくり、2018年7月に報告書をまとめた。
「県短の課題と将来設計を議論し、改革につなげることが、鹿児島大からの“落下傘学長”である自分の責務だと考えた。広く教員に参加を募って会を設置し、十数人で週1回ほど集まり、半年かけて議論。四年制化に加え、国公立大のような独立行政法人化の必要性を報告書に取りまとめた。全教員が参加する教授会で説明したが、総意として県へ提言することはできなかった。歴代学長も四年制化に向けてさまざまな活動をしてきたが、実現できていない」
-なぜ独法化が必要なのか。
「教授会ではなく、外部の人も加えた役員会で予算の使い方や人事などの運営計画を立案し、スピード感を持って斬新な改革に取り組む必要があるからだ。外部資金を獲得する力も高まるだろう。教員採用や人事の透明性にもつながる」
-四年制化の必要性は。
「東シナ海の安全保障や食料自給など国際的な課題に直面する鹿児島には、国立大とは別の切り口で研究し、シンクタンクとして県を支える公立の四年制大が必要だ。県内にないので、宮崎や熊本の公立大に進む高校生もいる。優秀な人材の県外流出につながっている。四年制化するには文部科学省による資格審査が必須で、教員の質向上にもつながる」
「短大には構造的な限界もある。大学生は教養教育から専門教育に移る3、4年時に劇的に成長することがある。よく『学生が化ける』と称するが、2年間では足りないことがある。主に女子教育を担う高等教育機関として短大が誕生したが、時代は変わった。もう女性が脇役の時代ではない。生涯賃金を見ても、大卒と短大卒では格差がある」
-県は、四年制化した場合、若年者の県内定着にマイナスの影響が出ることを懸念している。
「視野が狭い。面白い研究をすれば、県外から学生が集まるだろう。長い目でみて将来の鹿児島の発展を支える人材育成が必要だ」
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のろ・ただひで 1950年生まれ、青森県出身。北海道大大学院水産学研究科博士課程中退。水産学博士。78年に鹿児島大水産学部助手となり、教授や副学長などを経て、2016年4月から県立短大学長を4年間務めた。横浜市。