続く短大閉学ドミノ…生き残る道は「ハイブリッド型」への転換。地方に根強い公立短大ニーズも満たす手法とは? 元学長は私大の公立化も視野に未来を語る

2025/02/02 18:00
卒業証書を受け取る卒業生ら=24年3月18日、鹿児島市下伊敷1丁目の鹿児島県立短大
卒業証書を受け取る卒業生ら=24年3月18日、鹿児島市下伊敷1丁目の鹿児島県立短大
 学生募集に苦戦する鹿児島県立短期大(鹿児島市)の活性化に向け、県が設置した有識者による検討委員会は、2月にも提言書をまとめる。「四年制化は前提としない」という県の意向をくみながら進んだ議論。かつて改革を訴えた元学長は、どう見ているのか。2020~21年度に学長を務めた塩地洋さん(69)に課題や理想像を聞いた。(連載「県短大活性化~元学長の提言」㊦から)

 -鹿児島県立短期大(鹿児島市)の学長時代、学内の教員でつくるワーキンググループを立ち上げ、約1年かけて報告書「四年制大学化の可能性を探る」をまとめた。その狙いは。

 「全国でも鹿児島でも短大への進学率は下がる一方で、県短の受験者数も右肩下がり。このまま何もしなければ、定員割れが加速するのは確実だからだ。鹿児島の人口規模で、公立の四年制大がないのが珍しい。18歳人口の県外流出の一因になっている。2021年に県内高校にアンケートをしたところ、回答した63校のうち7割が『四年制化を進めるべきだ』と答えた」

 -報告書のポイントは。

 「全てを四年制化するのではなく、入学定員255人のうち135~195人前後を四年制に転換し、残りの60~120人程度を短期大学部として残す案を示した。短大を残したのは、鹿児島は短大進学率が高く、そうしたニーズにも公立大として応える責任があるからだ。全面的な四年制化では校舎の大幅な新増築が必要となるが、部分的にすることで設備投資を抑えることもできる。教員増による人件費増は、学生数が増えることによって授業料と交付金の増収でカバーできる試算を示した」

 -メリットは。

 「メインターゲットは、鹿児島大への入学は少し難しいがそれなりの学力がある若者。鹿大以外に国公立の総合大が県内にないため、他県の国公立大を選ばざるを得ない高校生の受け皿となり、県外流出を食い止めることができる」

 -県は、四年制化によって若年者の県内定着にマイナスの影響が出ることを懸念している。

 「出身が県内か県外かで入学金に差をつけたり、県内高校からの推薦枠を広げたりするべきだ。県内出身者への優先的な奨学金も考えられる。そもそも、県短で学べる学科は、既に他県の国公立大にあるものが多く、県外からの流入はそれほど多くならない。県内出身の学生が多ければ県内就職も多いだろう。卒業生の県外流出が心配なら、県内での定着率を高める具体策の拡充が必要だ」

 -県への要望は。

 「四年制化の方向性を明確に打ち出すことを期待している。報告書も参考にしてほしい」

 -他県では、私立大を公立化する動きもある。

 「国が地方創生を推し進め、公立大には潤沢に予算措置される可能性がある中で、選択肢として検討する価値があるのではないか」



 しおじ・ひろみ 1955年生まれ、和歌山県出身。京都大大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。九州産業大助教授、京大教授などを経て、2020年4月に県立短大学長就任。22年3月、体調不良のため任期途中で辞任。大阪市。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >