公園内で進む大がかりな工事「何だ、あれ?」…土台は中世の城跡へ続く。住民も「すっかり忘れていた」と笑う計画が30年の時を経て動き出していた

2025/02/08 15:00
つり橋整備に向け、作業が続く日特WKS公園。川内川を挟んで左が虎居城跡=1月30日、さつま町虎居
つり橋整備に向け、作業が続く日特WKS公園。川内川を挟んで左が虎居城跡=1月30日、さつま町虎居
 「園内で大がかりな工事をしているようだが、何なのか」。鹿児島県さつま町虎居の日特WKS公園(北薩広域公園)の川内川沿いで行われている作業現場について、南日本新聞に問い合わせがあった。担当する北薩地域振興局土木建築課に取材すると、2026年度の完成を目指して「つり橋」を整備中とのことだった。

 つり橋は、園内の「のびのびゾーン」隣の未開発地点(川内川右岸)と、「歴史ゾーン」に位置づけている対岸の虎居城跡(左岸)をつなぐという。

 城跡一帯は県所有で、庭園や土塁など中世の山城遺構が見つかっている。樹木に覆われ現在は立ち入りを禁止しており、県はつり橋に加えて園路や休憩所を造り、来園者が散策など地元の歴史に親しめる空間づくりを計画している。

 つり橋は長さ172メートル、幅2.5メートル。ケーブルは鋼製で、床は格子状で下が見える人道橋を予定する。現在は橋脚を支える橋台など下部工を造っており、本年度中に終了する。年度内に上部工の工事契約を結び、26年度中の完成を目指す。整備費は約8億6000万円。歴史ゾーンの具体的な活用方法は決まっておらず、使用開始はずれ込むという。

 1993年の基本計画では、つり橋を2本整備するとしているが、建設中の橋の利用状況を見ながら増設するか判断する。県担当者は「歴史ゾーンの活用方法は、町などと協議して決めたい」としている。

 89年に虎居城跡を調査した宮之城文化懇談会の小辻清行会長(91)は「つり橋を架ける話はすっかり忘れていた」と笑い、「虎居城の存在自体を知らない町民も多い。静かな環境で、地元の歴史に思いをはせられる場所になってほしい」と切望した。

■日特WKS公園(北薩広域公園)
 鹿児島県内に3カ所ある県立広域公園の一つで1993年度、整備事業に着手。2002年度に民俗文化を体験・紹介する「ふるさとゾーン」、16年度に芝生の広場やステージがある「のびのびゾーン」が使用を開始し、現在は「歴史ゾーン」の整備が進む。広さは102.3ヘクタール。23年度の来園者は約9万8000人。

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