運航廃止が決まった深夜の桜島フェリーに密着、船上で出合った残業の疲れと、恋と、夜の仕事と…「いつかはこうなると」変わる未来に利用者困惑

2025/02/10 11:30
桜島港発の桜島フェリーに乗る男性=1日午前3時13分
桜島港発の桜島フェリーに乗る男性=1日午前3時13分
 鹿児島市街地と桜島を結ぶ桜島フェリーは10月から、経営改善を目的に、深夜帯の8便(午前0時~3時半発)が廃止される。2月1日、全ての便に乗り、客室の乗客に話を聞いた。利用の少なさから「廃止は仕方ない」との受け止めが多かったが、仕事や私生活への影響から困惑する様子もあった。乗客の声を紹介する。

 【午前0時、桜島港発。旅客3人、車両5台】

 市街地の実家へ帰る鹿屋市の公務員女性(24)「鴨池・垂水フェリーの最終便は午後9時で、仕事後は間に合わない。赤字解消のため深夜便廃止は仕方ないと思うが、週末から月曜朝にかけては維持してもらえるとありがたい」

 市街地の恋人宅へ向かうという鹿屋市の接客業女性(25)「午後10時に仕事を終え、急いで桜島港へ車を走らせた。毎週末、深夜便で行き来するのがルーティン。陸路を使わないのは、夜の運転が怖いから」

 【午前0時半、鹿児島港発。旅客11人、車両7台】

 残業を終えて帰宅する経理関係の会社員男性(61)「深夜の客はわずかなので、赤字解消策として廃止は理解できる。ただ鹿児島港発の最終便が午後11時半では早すぎる。残業する日は会社か宿に泊まることになりそう」

 桜島の実家から市街地へ通学する男子大学生(22)「アルバイト後に仲間とご飯に行ったり、遊んだりできなくなる。付き合いが悪いと思われるのは嫌だ。24時間運航が桜島フェリーの売りだったのに」

 【午前1時、桜島港発。旅客4人、車両4台】

 市街地で働く垂水市の派遣社員男性(23)「夜中まで仕事をした後、始発まで待つのはしんどい。深夜帯の真ん中に1往復でも残せないか」

 桜島で夜釣りをし、市街地へ帰る自動車板金業の男性(24)「廃止後は陸路で行く。フェリーは楽だし、人だけなら安いのがいい」

 【午前1時半、鹿児島港発。旅客4人、車両5台】

 天文館のスナックで働く女性(51)「10月からは市街地の知人宅に泊めてもらう。両親がいるので桜島に住んでいるが、2人を見送ったら市街地へ引っ越すつもり。深夜便廃止で不便になるなら、なおさら。桜島の人口はますます減るだろう」

 新聞配達の手伝いで鹿屋市へ向かう男性(37)「新聞輸送トラックは深夜便を使っている。廃止されたら出荷を早めるか、配達を遅らせるか。今後どうなるのかは分からない」

 【午前2時、桜島港発。旅客0人、車両3台】

(運転手が車を降りて客室に来ることもなく、船のエンジン音とテレビ音だけが響く)

 【午前2時半、鹿児島港発。旅客5人、車両0台】

 天文館のキャバクラで働く桜島在住の女性(28)「廃止されたら朝まで飲むだけ。緊急車両を運ぶ準備だけはしっかりとしてほしい」

 昼夜のダブルワークで、夜はキャバクラ勤務の垂水市の女性(30)「鹿児島港発の始発が午前4時半では昼の仕事に差し支える。天文館での仕事はやめざるを得ない」

 【午前3時、桜島港発。旅客1人、車両4台】

 市街地でタクシー運転手として働く桜島の男性(69)「午前2時に起き、2日に1度、この便に乗る生活を数十年続けている。生活リズムを変えられるだろうか。廃止は困るが、客がこれだけ少なければやむを得ない。いつかはこうなると思っていた」

 【午前3時半、鹿児島港発。旅客6人、車両4台】

 市街地に住み、垂水市の養殖会社に勤める男性(53)「始業は午前5時。廃止後の始発便では、いけすに向かう船に乗れない。陸路は自宅を同2時半に出発する必要があり、ガソリンも高いため無理だ。せめて始発が同4時になれば」

 天文館の飲食店で働く垂水市の男性(43)「いつもは午前2時半発の便に乗っている。始発の同4時半まで待つのはつらい。転職するか、市街地に引っ越すか。10月までに決めなければ」

 
(旅客人数は車両運転者・同乗者と記者を除く)

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