原子力総合防災訓練で自衛隊員の指示の下、ヘリコプターに乗り込む寄田地区の住民=15日午前11時10分ごろ、薩摩川内市
九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故を想定した国と鹿児島県合同の原子力総合防災訓練は2日目の15日、5キロ圏内の住民避難や複合災害の発生を念頭に置いた救助などを実施した。被ばくの可能性が高まったとして、シナリオは「全面緊急事態」に移行した。
川内1号機の炉心冷却が不能になったとの通報を受けた移行措置。首相官邸と同市の現地対策本部などはテレビ会議で情報を共有し、石破茂首相が5キロ圏内の住民に安定ヨウ素剤の服用などを求める緊急事態宣言を出した。「国民の生命と身体の安全の確保が最も重要」と述べた。
宣言と前後して住民らは避難を開始。孤立した設定の同市寄田地区では陸上自衛隊ヘリが訓練に使われ、4人が乗り込んだ。地区コミュニティ協議会の時吉正男会長(73)は「大きな揺れもなく安心して乗ることができた。有効な手段だと感じた」と評価した。
水引、峰山両地区の住民計約80人は計画上のバス避難先である鹿児島市が大規模被災に遭ったとして、目的地を姶良市へ変更。薩摩川内市久見崎町の住民12人は地元漁港で海上自衛隊のゴムボートに乗り、沖の艦艇に移る手順を確認した。
一部の訓練内容は行政機関に事前に伝えず実施。無人航空機による空間放射線量の測定や、通信障害に備えた移動基地局の設置、参集できない薩摩川内市職員に代わって消防団員が放射線防護施設の開設に当たる作業もあった。
最終日の16日は放射性物質の放出を想定した5~30キロ圏住民の避難訓練などがある。