原子力総合防災訓練で避難バスを除染する検査所のスタッフら=16日、姶良市の県森林技術総合センター
九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故を想定した国と鹿児島県合同の原子力総合防災訓練は16日、3日間の日程を終えた。全面緊急事態下の同日は放射性物質が放出したとして、5~30キロ圏の住民が避難や屋内退避に取り組んだ。原発から30キロ付近の3カ所に設けた検査所では、被ばくチェックや簡易除染などの手順を点検した。
薩摩川内、いちき串木野両市の計6地区で空間放射線量率が基準の毎時20マイクロシーベルトを超えたとして、国が住民の一時移転を指示。汚染の恐れがある地元野菜などの飲食も制限をかけた。
姶良市の県森林技術総合センターに設けた検査所には、住民らを乗せた避難バスが相次ぎ到着。車両の汚染チェックに始まり、住民の被ばくチェックや簡易除染、安定ヨウ素剤の配布方法を確認した。
出水市の検査所には段ボール42箱分の国家備蓄安定ヨウ素剤が保管先の熊本県内から運ばれ、県職員らが検品。今回初めて薩摩川内市の甑島にも設置した。
このほか、孤立地区が発生した能登半島地震を教訓にヘリや巡視船での住民避難を実施。いちき串木野市では陸上自衛隊が2日間で架けた全長約22メートルの橋を住民らが渡った。薩摩川内市では、断水地域での屋内退避を想定した応急給水訓練があった。ヘリを使った一部訓練は、天候不良のため中止された。
姶良市の検査所などを視察した塩田康一知事は「関係機関との連携強化が図られ、住民の防災意識向上にも一定の効果があった」と総括。「課題も出てくるだろう。今後に生かしたい」と述べた。