サツマウツノミヤリュウの下顎と牙
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
私が長島町獅子島で発見したクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)の標本は現在、鹿児島市の県立博物館のショーケースに、頭部から首前方にかけての骨が展示されています。この部位は私がサツマウツノミヤリュウの記載論文を執筆するにあたり、標本種の特徴がよく現れる頭部周辺の骨を、優先的にクリーニング(化石周辺の余分な岩を削り取る作業)した結果物です。
実は脊椎を中心に、まだクリーニングできていない多くの骨が、岩に埋もれたままの状態で、博物館の地下倉庫に眠っています。記載論文では、サツマウツノミヤリュウが東アジア最古のエラスモサウルス科のクビナガリュウ化石であることや、同じ場所で発掘したアンモナイトから、時代を約1億年前と確定しました。比較的若い個体で、他のクビナガリュウの属種にはない亜三角形をした歯の断面形状などが見られ、特徴を図表にまとめました。
そのデータはサツマウツノミヤリュウが新種であることを示しています。しかし、体全体のクリーニングができていないことから、最初の記載論文では、保存部位の報告と生息した時代について論じるにとどめ、新種であることまでは踏み込みませんでした。
いつの日か鹿児島で環境が整えば、残りの部位のクリーニングと復元作業を進めたいです。これは鹿児島の宝を後世に残すために私がやり残した、大きな仕事のひとつと考えています。