生徒と会話しながら自転車を整備する有岡直生さん=薩摩川内市の川内高校
鹿児島県薩摩川内市の川内高校を定期的に訪れ、生徒の通学用自転車を無償で整備し続ける男性がいる。同校に在学中だった次女・莉世さんを3年前に病気でなくした同市の有岡直生さん。娘が過ごした学校への恩返しの気持ちを込めている。
莉世さんは誰にでも優しく、英語が得意だったという。2021年に同校に入学。K-POPが好きでダンス部に入り、韓国語を習っていた。将来は人の役に立つ仕事がしたいと話していたが、22年1月に急な病気のため、15歳でこの世を去った。コロナ禍だったが、学校側の提案で開いたお別れ会には同級生ら多くの人が駆けつけた。
しばらくしたある日、自転車のかごが取れ、荷物を手で持ちながら運転する高校生を見かけ、「事故に遭えば家族が悲しむ」と感じた。勤務する市立少年自然の家では自転車を整備することもあり、学校に申し出て22年6月から始めた。
同校では現在、全体の4割を超える334人が自転車で通学する。有岡さんは毎学期に1回、工具箱を持って訪問。希望する生徒の自転車を整備する。50~60台の依頼があり、2日連続で足を運んだこともあった。
3学期は7日に訪れた。昼休みになると、自転車を押した生徒が次々と列を作った。有岡さんは工具やオイルスプレーを使い、約20台を整備。2年の横山ゆうきさんは「走る時にガタガタしていた。学校で見てもらえてとても助かる。またお願いしたい」と感謝した。
学校に来ると、莉世さんが過ごしたであろう雰囲気を感じられるという有岡さん。高校生に「命を大切に、自分の夢に向かって力いっぱい生きてほしい」とエールを送る。同校は生徒会が主体となり、3月に感謝状を贈る準備を進めている。