小学生向けに友だちづくりや体力づくりのイベントを開いた大口高生。生徒数増加の願いも込められている=22日、伊佐市の同校
鹿児島県は総額8527億3400万円の2025年度一般会計当初予算案を発表した。基幹産業の「稼ぐ力」の向上や総合的な少子化対策、担い手不足解消に向けた人材確保・育成策の3本柱に重点配分する内容だが山積する課題は多い。塩田康一知事2期目の予算編成を通して、各分野の現状を探る。
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鹿児島県内の公立高校で深刻な定員割れが続いている。14日発表された2025年度入試の出願状況では、61校124学科が定員割れとなった。県教育委員会だけでなく、学校や地元も生徒確保に取り組むが、少子化などで思うような成果は上がっていない。県は来年度、将来ビジョン検討委員会を設置し、県立高の在り方を議論する考えだ。
「できる限りの対策を進めるしかない」。大口高校(伊佐市)の吉満庄司校長(59)は生徒確保に頭を悩ませる。市の補助金を活用し、市内3校(伊佐農林、大口明光学園)と合同説明会を開いたり、生徒が地元小学生向けにイベントを開いたりするなど、魅力発信に取り組む。
20年度に定員を1学年3学級120人から2学級80人に減らしたが、入学者の減少傾向が続く。近年は40人に届かない年もあり、全校生徒は105人に。1、3年生は実質1学級での運営を余儀なくされている。
教員数は定員に応じて決まるため、小規模校への配置は少ない。公民など一部科目は、別教科の教員が臨時免許で授業を行う。吉満校長は「現状のままでは、生徒が求める、専門性の高い学びや進路実現に対応するのは難しい」とこぼす。
元伊佐市長の隈元新さん(75)は「より充実した環境を求める子は市外の私立に通っている」と明かす。市教育委員会によると、24年度に市内3校に進学した地元中学生は全体の半数に満たなかった。
隈元さんが現職だった14年度、市は大口高支援として国公立大や難関私大合格者に最大100万円の奨励金を設けた。全国的な話題となったが、学級減は止まらなかった。「市だけの支援では対応しきれない。選ばれる学校になるには、県の適切なかじ取りが不可欠だ」と訴える。
県全体の公立高の募集は10年前と比べて690人少なく、学級数も減った。それでも定員割れが続く。生徒数が定員より1学級(40人)少ない学科がある学校は、24年度は大口のほか、枕崎や古仁屋など68校中14校に上る。
県教委も手をこまねいていたわけではない。23年度から「魅力ある県立高校づくり」と銘打ち、小規模校連携や学校紹介サイト開設に取り組んだ。本年度は自己推薦方式も導入し、一定の成果を挙げている。
しかし、塩田康一知事は7日、予算案発表の会見で「高校の小規模化を食い止めるまでには至っていない」と指摘。「再編や定員見直しも排除せず、幅広く議論してもらう」として、将来ビジョン検討委運営費318万円を計上した。
「さらなる少子化を踏まえると、統廃合は避けられない」。高校教育に詳しい上智大学の相澤真一教授(教育社会学)は、今後の再編を予測する。
高知や宮崎など、全国で進む再編の動きを例に挙げ、「統廃合を見据えながら、通学手段の確保や遠隔授業の拡充を図るなど、生徒が充実した学びを受けられる、持続可能な高校の在り方を検討していくべきだ」と提言した。
(随時連載「鹿県予算案2025」から)