特別抗告棄却を受け会見する森雅美弁護士(中央)ら=26日午後4時25分、鹿児島市のカクイックス交流センター
4度目の再審請求が最高裁で棄却された大崎事件。弁護団は決定の通知を受けた26日、東京と鹿児島市で会見を開き、「誠に遺憾だし、残念」と肩を落とした。だが、5人の裁判官のうち1人が付けた反対意見は、新旧の証拠を総合評価し、再審開始を認める内容。弁護団は第5次請求を視野に「次につながる大きな架け橋」と希望を口にした。(連載「遠い救済~大崎事件再審請求」㊤より)
「アヤ子さんに顔向けできない。弁護士である限り、この闘いをやめるつもりはない」
午後2時前、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護団の鴨志田祐美事務局長は目に涙を浮かべながら語った。20年にわたって弁護人を務め、再審制度を巡る法の不備を実感してきた。この日は再審法改正を目指す国会議員連盟の総会後に慌ただしく会見に臨み、「同じ理屈を繰り返している。4人の判事の矜持(きょうじ)を疑わざるを得ない」と決定を厳しく批判した。
森雅美弁護団長も鹿児島市で開いた会見で「3次請求の最高裁と同じ。先入観にとらわれている」と無念そうにうつむいた。「生きているうちに、思いを遂げさせてあげたい」と無実を訴え続ける原口アヤ子さん(97)を思いやった。
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原口さんを支援する武田佐俊さん(81)=串間市=ら4人は同日、原口さんが入所する施設を訪問し、決定内容を伝えた。「生きている限り、勝つまでがんばろうね」などと書いたノートを見せると、ずっと見つめていた。しかし、原口さんの長女で申立人の西京子さん(70)=大阪府=が最近元気がないと心配する話をしていると突然泣き出したという。
武田さんは6月で98歳になる原口さんについて、「内容は理解している。元気に見えるが、命を削る日々を過ごし、時間は限られている。今回の決定は正義に反する。多くの国民に最高裁の在り方を考えてもらい、再審制度の改正を急いでほしい。今後も一緒に闘い続ける」と話した。
鴨志田弁護士によると、西さんは電話口で号泣し、「無実なのはみんな分かっている。やめるわけにはいかない」と第5次請求に臨む意思を示したという。
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4度の再審請求で最高裁の裁判官が再審開始を認める意見を表明したのは今回が初めて。森弁護団長は、新証拠の証明力を認めた宇賀克也裁判官の15ページに及ぶ反対意見に話が及ぶと、「精緻に検討して判断し、われわれの主張を理解してくれた」。他の弁護士からも「満額回答」「再審開始への道筋を示してくれた」と評価する声が相次いだ。
佐藤博史弁護士は「宇賀裁判官は学者出身だが、刑事裁判官が書くような立派な決定文。論理的に負けていない。多数意見が間違っていることを形に残してくれた」と受け止める。泉武臣弁護士は「再審を棄却した多数意見と、1人の反対意見のどちらに説得力があるか、読めばわかる。これをてこにして次につなげたい」。救済は、また遠のいたが希望の光も見えた。