あみやたかしさん
2024年度南日本文学賞(南日本新聞社主催)の選考会が1日、鹿児島市の南日本新聞会館であり、小説・文芸評論部門は、同市の飲食業、あみやたかし(本名・網屋崇)さん(51)の小説「真夏の変態」、詩部門は、熊本市の自営業、広底友里恵さん(38)=鹿児島市出身=の「二度寝ほか」12編に決まった。
芥川賞作家の青来有一、町田康の両氏と詩人の三角みづ紀氏(同市出身)が審査した。小説44編と詩16編から絞られた小説、詩各3編について、部門ごとに各委員がそれぞれの観点から1点ずつ批評、討議した。
あみやさんの小説は、高校野球経験者の中年男性が主人公。怪しげな薬を服用し、母の死やバイトの不採用などが重なる中、転落していく狂気のさまを現実と妄想を交錯させユーモラスに描く。
「現実と妄想の絶妙なバランスを作り出す言葉の機能を心得ている。不思議な迫力がある」「とっぴな内容や人物の存在理由がきちんと書かれている。面白い」と称賛され、満場一致で選ばれた。
広底さんの詩は、「荒削りだが魅力的な不完全さがある。もっと作品を読んでみたい」「面白い部分がちりばめられている」と評価された。
あみやさんは「コロナ禍で自分を見つめ直した時に思ったことを格好をつけずに書いた。認められてうれしい」。広底さんは「以前、選考会で受けた厳しい指摘を糧に書き続けてきた。信じられない」と喜びを語った。
01年から公開してきた選考会は、20年以上を経て「一定の役割を果たした」と判断し、今回から非公開で実施した。贈賞式は3月下旬、鹿児島市の南日本新聞会館である。
※広底さんの広は「まだれに黄」