「誰もが働きやすい職場」について意見を交わす大分合同新聞社の「ジェンダー平等チーム」メンバーら=4日午前、大分市
国際女性デーに合わせ、南日本新聞社が九州・沖縄の新聞社と鹿児島県の民放テレビ局計14社に社員の男女比などを尋ねたところ、20~34歳は女性が半数程度を占め、男女数の均衡が取れていた。35歳以上は女性の割合が大幅に減り、男性が8割以上を占める。(連載「メディア平等ですか?~当事者としてジェンダー格差の現状」㊦)
ジェンダー平等が実現した職場とは? 大分合同新聞社(大分市)の「ジェンダー平等チーム」がたどり着いたのは「誰もが働きやすい職場」だった。
メンバーは7人で、若手から管理職まで世代や部署を超えて集まった。関心の高い社員だけでなく、あまり意識してこなかった人も一緒に忌憚(きたん)のない意見を交わす。人事・総務部の薬師寺章伊(しょうい)さん(32)は「チームに入り、課題を感じていなかったことが自分の課題だと思った」と明かす。
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社会のジェンダー格差解消への機運の高まりを受け本年度に発足した。社員の関心度や職場に感じている課題を可視化しようとアンケートを実施。女性だけではなく全員の問題として捉えやすいよう、表題にはジェンダーという言葉を使わず、ワークライフバランスや周囲とのコミュニケーションなど7項目について6段階評価で問いかけた。
自由記述への回答が多く、管理職の意識改革を期待する声が目立った。リーダーで報道部長の渡部さおりさん(49)は「書くこと自体が覚悟のいることだと思う。突き付けられた課題をしっかり受け止めたかった」と振り返る。
社員向け説明用の動画も作り、寄せられた声を紹介した。結果は社外のキャリアコンサルタントと共有。組織の課題に沿った社内セミナーを企画、開催した。約50人が参加しその半数を管理職が占めた。セミナーの満足度は92.6%と高かった。
人知れず傷つくことがなくなるように、自分の意見や気持ちを安心して話せる「心理的安全性」の高い職場を目指す。メンバーは「続けていくことが大事」と口をそろえる。誰もが働きやすい職場へ、歩みは始まったばかりだ。
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発信するコンテンツに多様性を反映させようとする取り組みもある。NHKは2021年4月から、番組単位で出演者の男女比を継続的に計測する英BBCの「50:50(フィフティー・フィフティー)The Equality Project」に参加。札幌局は24年度、地方局として初めて名乗りを上げ、測定を始めた。
これまで出演がない女性識者の発掘につながり、化粧品などの話題を男性にも取材することで新たな視点が得られた。ニュース制作担当の山口芳(かおり)さん(40)は「計測によって自身の無意識の偏見や思い込みにも気づけた。東京に比べてジェンダー格差の大きい地方でこそやる意味がある」。
元タレントと女性とのトラブルに端を発するフジテレビの問題や、旧ジャニーズ事務所を巡る性加害問題での「沈黙」などでマスメディアは批判を浴びている。SNSやネット全盛の中、新聞やテレビは変革期だ。九州のテレビ局のある人事担当者はいう。「この厳しい状況下でも夢を持ってこの業界を目指す若者がいる。今がまさに変わるチャンスだ」