〈詳報〉日置5人殺害、二審でも死刑判決 責任能力認め控訴棄却 被告側は即日上告 福岡高裁宮崎支部

2025/03/14 06:30
福岡高裁宮崎支部
福岡高裁宮崎支部
 2018年に鹿児島県日置市で親族ら男女5人を殺害したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた岩倉知広被告(45)の控訴審判決公判で、福岡高裁宮崎支部は13日、死刑とした一審鹿児島地裁裁判員裁判判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。争点となった責任能力の有無について、平島正道裁判長は「精神障害が背景にあったとしても、その影響は軽微なものにとどまる」などと結論付けた。岩倉被告の弁護人によると、即日上告した。

 平島裁判長は判決理由で「いずれの犯行も怒りや犯行発覚を防ぐことなどが直接の動機。被告本来の人格である衝動性や他罰的な特性が大きく影響している」と述べた。

 一審で妄想性障害と診断した鹿児島大学の赤崎安昭教授とは異なり、控訴後の鑑定で東京科学大学の安藤久美子氏が「犯行時、重度の統合失調症だった」とした判断についても、「少なくとも常に統合失調症による妄想に支配されて行動が強制されている状態にあったとまでは述べていない」と指摘した。

 その上で「強い殺意に基づく人命軽視も甚だしい悪質な犯行で、5人の命を奪った結果は極めて重大だ」と言及。「死刑の適用は慎重に行わなければならないが、刑事責任は極めて重大。死刑を宣告した原判決はやむを得ず、重すぎて不当であるとは言えない」とした。

 福岡高検の村中孝一次席検事は「適正・妥当な判決だと受け止めている」とのコメントを出した。

 判決などによると、岩倉被告は18年3月31日~4月1日、日置市東市来町湯田の祖母=当時(89)=方で小言を言われ、父親=同(68)=と祖母の首を絞めて殺害し、近くの山中に遺棄した。同6日には、安否確認に訪れた伯母=同(69)、その姉の女性=同(72)、近くに住む男性=同(47)=の首を絞めて殺害した。

 鹿児島地検は19年1月に殺人罪などで起訴。一審は完全責任能力を認め、20年12月に死刑判決を言い渡した。09年の裁判員制度導入以降、鹿児島地裁での極刑判断は初めてで、岩倉被告は即日控訴していた。

■刑事責任能力
 犯罪行為の刑事責任を負わせるための前提。刑法39条は「心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為はその刑を減軽する」と定める。「心神喪失」とは、精神の障害によって善悪を判断し、行動を制御する能力が失われた状態。「心神耗弱」は、その能力が著しく減退した状態を指す。心神喪失(責任無能力)、心神耗弱(限定責任能力)のいずれでもない場合、完全責任能力になる。

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