鳥越智巳さんの遺影を手にするPTA会長の今奈良孝さん=12日、指宿市の北指宿中学校
鹿児島県指宿市の北指宿中学校で12日、卒業式があり、3年生89人の保護者全員で寄せ書きした巨大な「卒業証書」が会場に掲げられた。保護者の1人で2023年に48歳で亡くなった鳥越智巳さんと、友人でPTA会長の今奈良孝さん(50)の会話から端を発したサプライズ企画に、生徒たちからも驚きの声が上がった。
3年生が入学した22年は新型コロナの影響で、マスク着用や行事の縮小など学校生活で制限を強いられる場面が多かった。その様子を見てきた今奈良さんと、PTA役員でもあった鳥越さんは「この子たちの卒業式では、何か思い出に残るサプライズをしよう」と語り合った。
ところが23年9月に鳥越さんが急逝。地域活動も一緒にこなすなど、仲が良かった今奈良さんは「立ち直るのに時間がかかった」。それでも卒業の時期が近づくにつれ、亡き友人との約束を実現しようと決意。ほかの保護者にも協力を呼びかけ、夜間などに集まって準備を進めてきた。
3メートル四方の布で作った「卒業証書」には、生徒の名前とそれぞれに対するメッセージがぎっしり。式本番、3年生が合唱のために舞台に上がったタイミングで「卒業おめでとう」の掛け声に合わせて、2階後方から垂らしてお披露目した。
前生徒会長の田原迫楓さんは「私たちの知らないところで、保護者の皆さんが企画を進めてくれたことに涙が出た」としみじみ。今奈良さんも「感慨深い。(鳥越さんと)本来はこの場で一緒に門出を祝いたかったが、きっと天国で見守ってくれているはず」と目を細めた。