上まぶたが十分に上がらず視界が狭くなる「眼瞼(がんけん)下垂」。主に加齢で発症するが、手術する中高年が増えているという。症状改善に加え、外見への意識の高まりもあるようだ。鹿児島大学病院ではこの10年で手術件数が1.6倍に増えた。同大学医学部眼科の坂本泰二教授(鹿大病院長)に現状を聞いた。
上まぶたは上眼瞼挙筋という筋肉が、まぶたのふちの瞼板(けんばん)を引っ張って開く。眼瞼下垂はその上眼瞼挙筋が弱まったり、挙筋につながる挙筋腱膜(けんまく)が緩んだりして、まぶたの皮膚が下がった状態を指す。先天性や神経の病気によるものもあるが、多くは加齢が原因とされる。
まぶたを無理に上げようとして額に力が入り、頭痛や肩こりを起こすこともある。また、眠そうに見られるなど外見上の問題も指摘される。
治療は手術。まぶたの状態に応じて上眼瞼挙筋を縫い縮めたり、たるんだ皮膚を二重(ふたえ)の部分や眉毛の下で切除したりするほか、別の筋肉でまぶたを持ち上げるようにする手術もある。鹿大病院では外来か1泊入院で対応。坂本教授は「技術が進み、より安全で患者負担の少ない手術ができるようになった」と話す。
鹿大病院では2014年に専門外来を開設。初年度52件だった手術件数は、24年度は83件に増えた。坂本教授は「美容整形ではなく目的は治療」としつつ、「男女問わず見た目を意識する中高年が増え、治療への抵抗が少なくなっているようだ。表情も明るくなる」と話す。