ミィボが開くアドボケイトのスキルアップ研修=1日、熊本市
子どもの声を届ける支援をするアドボカシー事業。鹿児島県は2024年度に意見表明等支援員として個人4人を登録し、取り組みを始めた。熊本県では22年度にNPO法人が開設した「アドボカシーセンター熊本Me:vo(ミィボ)」が活動を広げる。
(連載「声をつなぐ・子どもアドボカシー始まる」㊦)
「アドボケイトの○○と言います。きょうはどんなお話があって来てくれたのかな」「離ればなれになった弟に会いたい」-。3月上旬、ミィボが熊本市で開いた研修会。31人がロールプレーイングなどを通して子どもたちへの寄り添い方を考える。
ミィボは子どもや若者の自立支援などに取り組んできた認定NPO法人トナリビトが設立。県と熊本市の委託を受け、アドボケイトの養成から派遣、研修までを担う。24年度の登録アドボケイトは37人で、一時保護所や児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設、児童心理治療施設、母子生活支援施設の計21カ所を定期的に訪問した。
アドボケイトは施設ごとに2、3人のチームを組み、月1~2回訪問する。活動時は「アドボケイトのおやくそく/はなしをきくよ/ヒミツはまもります/こどものみかた」と書かれた緑のベストを着用。子どもが話しやすいよう、気持ちを色で表すカードやサイコロなども活用する。
複数で担当するのは、個人の価値観に偏らず、多様な視点を取り入れるためだ。活動の前後でミーティングを開き、情報や意見を交わす。スーパーバイザー(SV)やコーディネーターが同行することもある。2カ月に一度、オンラインや対面でスキルアップ研修を行う。23年度は延べ1800人の子どもたちに関わり、約220回面談した。
事業を始めた22年度、県の一時保護所と児童養護施設の計5カ所を6人で担当した。ミィボの山下祈恵代表(38)は「アドボカシーという言葉は日本ではまだなじみが薄く、人材育成に加え、関係機関の理解を得ることが課題だった」と振り返る。現在まで施設に出向いての研修や意見交換を繰り返し行っている。
ミィボは今後、措置や処遇が決まる会議などでのアドボカシーの活用を目指すという。山下代表は「誰もが意見を尊重されるアドボカシーという文化をつくる取り組み。アドボケイトも一つのピースとして、専門職や地域、家族を含め社会全体の意識を高めていけたら」と話す。子どものモデルになるのは大人であり社会であるとして、「大人自身も、自分の声や思いを大事にしていいというメッセージが社会に広がれば」と願う。
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委託先の7割が民間団体
NPO法人全国子どもアドボカシー協議会(福岡)の2024年調査によると、意見表明等支援事業は全国の児童相談所設置自治体79のうち、47自治体が実施しており、13自治体が準備中。事業の実施主体を個人へ委嘱する自治体は3割、民間団体への委託が7割だった。
現状の課題として、「県が個人を直接雇用しているため、独立性が守られない状況になっている」との指摘もあった。「施設によって事業に対する温度差がある」「予算確保が課題」などの声も寄せられた。