鹿児島県警は、捜査上知り得た情報を知人女性に漏らしたとして、前捜査2課長の安部裕行警視(29)=警務部付=を地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで書類送検し、21日付で停職1カ月の懲戒処分とした。鹿児島地検は同日、「動機や目的が悪質とは言いがたい」などとして不起訴処分(起訴猶予)とした。安部警視は別の女性に性的暴行を加えたとして、不同意性交容疑で2月に書類送検されていたが、3月21日付で不起訴処分となった。地検は相手方のプライバシーに関わるとして、処分理由を明らかにしていない。
情報漏えいの送検容疑は2024年4月ごろと6月ごろ、同課が捜査していた二つの事件の情報を、私用スマートフォンのメッセージアプリで複数回にわたり女性に送信し、職務上知り得た秘密を漏らした疑い。
安部警視は18年警察庁入庁のキャリア官僚。県警によると、不同意性交容疑事件の捜査過程で発覚した。安部警視は県警に着任した23年8月以降、県内外の複数の女性と並行して不適切な交際をしていた。漏えいについて「忙しさを理解してもらうためだった。処分を重く受け止めている」と話している。漏らした内容について、地検は「捜査に関わる情報に触れるにとどまる」と説明した。
県警は「関係者のプライバシーが侵害される」として、二つの事件の内容を明らかにしていない。安部警視が漏えいした時期には、元巡査長と前生活安全部長の2人が、それぞれ別の情報漏えい容疑で逮捕されている。安部警視はこれらの捜査に携わっていた。
県警は安部警視を逮捕しなかった理由について「法で定める要件を考慮し、必要性がないと判断した」と説明。停職1カ月の妥当性については「行為の態様や動機、社会的影響などを総合的に勘案し、重い処分を下した」としている。
警察庁は、不祥事を防ぐために必要な業務管理などが不十分だったとして、21日付で岩瀬聡本部長を業務指導とした。中野誠刑事部長も同日、岩瀬本部長から業務指導を受けた。
岩瀬本部長は同日の記者会見で「再発防止策への信頼を大きく損なう。県民に深くおわびする」と謝罪。「再発防止策の重みを全職員に認識させ、信頼回復に努める」と述べた。
県公安委員会は「模範となるべき立場にもかかわらず、自覚と職責に欠けた不適切極まりない行為。組織内の徹底した綱紀粛正を図ること」と県警に求めた。